福祉事始め (福祉支援論)

あらいぐまさん

第1話 青さんを貸してください

 青さん――ここでは、特定の誰かではなく、私がこれまで出会ってきた“支援を必要とする人たち”の象徴として、その名を借りる。


 自尊心は、生まれたときから“少しだけ不格好”だ。

 けれど、風雪に耐え、誰かに磨かれ、自分でも磨き続ければ、

 やがて丸に近い形へと変わっていく。


 支援とは、その磨き方を共に探す仕事である。

 私は、支援を受ける側として生きてきた者であり、同時に、支援を行う側として現場に立っている者です。


 ここからは、少し語り口を変えて、支援員の皆様へ手紙を書くように話したい。


 拝啓 支援員の皆様。いかがお過ごしでしょうか。私は、相変わらずマイペースで過ごしております。


 さて、これまでの様子を見ていて、気になる事は幾つかありますが、それを責めたり、問いただしたりする積りはありません。楽しく暮らすには、誰しも一度は、“冬の時代”――泣きたくなる日を――越えなければならないからです。

 私自身も通ってきた道です。

 新米支援員の皆様も、今まさにその冬を歩いているのかもしれません。


 そうね、愛情と技術を同時に扱おうとすると、人はときに「自分が何者なのか」分からなくなることがあります。

 私もそうでした。

 技術を伝えれば冷たく見えるのではないか、愛情を示せば甘く見えるのではないか――

 その答えは、今も分かりません。


 ただ、知恵が足りないというだけで、“精神病”とレッテルを貼られ、行動に大きな制限を受けてしまう人たちがいます。

 彼らの姿を見ていると、どうしても胸が痛むのです。

 それは、かつての自分を思い出すからかもしれません。


 現実には、さまざまな人がいて、私を含め、皆それぞれ障害と、折り合いをつけながら生きています。


 私は昔から、怖い人が苦手でした。

 牙を抜いたように穏やかな人、あるいは自分の牙をきちんと制御できる人――

 そういう人としか付き合ってこなかったのです。


 青さんは、その基準から見ても“欲しい逸材”です。(牙が無い)

 手順さえ間違えなければ、必ず成長できます。

 それは、個別指導という形になるかもしれません。


 けれど、青さんが生きていく場所はここなのだから、最終的には“集団の中で生きられるように”という視点を、私は常に持っています。


 正直に言えば、世の中のことはよく分かりません。

 私の知識の多くは、学生時代に得たものばかりです。

 楽しく生きたいと願っても、寸前のところでいつも砕け散ってしまう。


 私は何のために生きているのか――

 今では、それすら分からなくなることがあります。


 それでも、生きる事が無駄だとしても、今すぐ死にたいわけではないのです。

 だから、青さんを――少しのあいだ、私に貸してください。

 必ず、成果を上げて見せます。



                            s.y 敬具 





 


 「ここまで書いてきたことは、私の思いであり、願いです。

 では実際に、私は青さんに何をしているのか――

 その“術”を、ここに記します。」


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