主人公が住んでいるのは、”完璧”な完成された世界。
あらゆる苦しみや悩みから解放されたユートピアのような場所で、労働とも呼べないほどささやかな義務を果たしながら暮らしています。
……いいなあ、って思いましたか?
確かに、戦争や飢餓がないのは理想的です。
そうあってほしいと、きっと多くの人が願うでしょう。
でも、それが人の力――永きにわたる人類の努力の結晶ではなく、より進化を遂げたAIによって整えられ、準備された世界だったなら。
便利で快適な”最適化”された社会。
繰り返されるのは、すべてが”穏当”で問題のない毎日。
どうですか?
あれ、と思った方も、そう思わなかった方も。
読めばきっと、主人公と同じ心のざらつきにはっとさせられることでしょう。
主人公の静かな戦いを、応援しています。
【レビューコンテスト応募】
戦争も労働も消えた完璧な世界という設定は目新しくないけど、その「完璧さ」を春日と相棒AI・青7号の事務的な掛け合いだけで描いているのが面白い。義務、誤差、基準値内――そういう無機質な言葉が繰り返されるたびに、説明されない部分にこそ不気味さが溜まっていく書き方で、SF的な説得力がある。
派手な事件はまだ起きないけど、「指先が震える」という小さな身体反応一つで世界の歪みを匂わせる導入は丁寧。青7号の応答が春日の癖を一つずつ「健康ログ」として回収していくやり取りに、優しさと監視の境目が曖昧な気味悪さがあって、続きが気になる。
短い話数でテンポよく進むので、管理社会×AIバディもののディストピアが好きな人には読みやすい一作だと思う。