第21話 三宅坂46がやって来た!
沙織「ねえ、はっとり」
美月「どうしたの? 深刻な顔して」
沙織「あのー、そのー」
美月「何があったの?」
沙織「三宅坂46のオーディションに、姉が勝手に応募して!」
美月「は!?」
沙織「三次選考まで行きそうなの! 写真判定クリアして!」
美月「……おめでとう……って、あんたねー!」
沙織「はっとりとの約束、守れるかなあ」
美月「はあ~あ、沙織ったらすぐにこれだ。敷女の高校生として、恥ずかしくないの?」
沙織「そ、そう言われても……」
美月「ここは、アイドル学校じゃないんだし、少しは自重しろ、ってんだ全く!」
沙織「いっそ、この際、断ろうかな……」
美月「待って、それは勿体ないよ。沙織の人生なんだし、それは沙織が決めろよ」
沙織「どうしよう……東京に来てください、ってお願いのお手紙が」
美月「えー、貴殿は……優秀な人材につき、東京・赤坂のスタジオまで来てください……って、この手紙、本物?」
沙織「うん、本物……」
美月「はあ~あ……じゃあ、宿泊滞在はどうなるのよ」
沙織「とりあえず、桃花ちゃんのおじいさんおばあさんのお家、かなあ……」
美月「総武本線、新小岩? お家の方に迷惑じゃない? ご老人夫婦よ?」
沙織「それもそうね……」
美月「服装は? 何か着るものあるの?」
沙織「うん、それに関しては心配ない。ウォークインクローゼットに一杯あるから」
美月「さすがは金持ち……」
沙織「衣装の心配より、わたしの心配してよー! 困ってるんだからさぁ!」
美月「でも、三宅坂46の競争率って、すごく高くない? 受けて来るだけ受けて来れば? 応援する」
沙織「う、うん。ごめんね、はっとり。ちょっと、桃花ちゃんに電話するー」
美月「あー、はいはい」
◇ ◇ ◇
沙織「もしもし、桃花ちゃん? わたし。高槻です」
桃花「沙織ちゃん、どうしたの? 土曜日の朝から」
沙織「それがさー、聞いてよお、三宅坂46のオーディションに、姉が勝手に応募してさー」
桃花「ふむふむ。それから?」
沙織「来月初旬に東京の赤坂で第三次選考が行われますので、来てくださいねって」
桃花「えー!! ちょっと待って、あの三宅坂46でしょ? TVに出てる」
沙織「そう。そうなの。で、いま、はっとりが家に遊びに来てて、相談してたわけなんだけど」
桃花「それはそうだね。相談したくもなるね。あの宝塚系のお姉さんが勝手に決めたんでしょ?」
沙織「断ろうか、行こうかどうしようか……」
桃花「行くんだったら、応援するけど……わたし、東京・神奈川・千葉に親戚多いから、お願いすれば、従姉の家とか泊められなくはないけど……」
沙織「行こうか、どうしようか……」
桃花「行っておいでよ。多分、競争率高くて、あんまり受かんないと思うけど」
沙織「たしかに」
桃花「まあ、ダメもとで、親戚中に電話かけるから、首都圏のどこかに泊められなくはないと思うよ」
沙織「助かります、桃花さまー」
桃花「えっへん!」
沙織「ありがとう。助かりました。じゃあ、またねー」
桃花「うん、またねー」
美月「電話、済んだかー」
沙織「うん、何とか桃花ちゃんの親戚のどこかのお家に泊められなくはないってさ」
美月「ほー、それは良かった。で、桃花は何て言ってた?」
沙織「多分、競争率が高いから、受からないだろうけども、って」
美月「そりゃそうだね、わたしと同意見だ。ダンスもあるし、ヘアスタイルだって、前髪決めたりとかさ、いろいろあるじゃない、ほかの地方の子とうまくやれるのか、とか、いろいろね」
沙織「はーあ、ごめんね、はっとり。相談に乗ってもらって……」
美月「もう、相談終わり? それであなた大丈夫?」
沙織「だいじょうぶ、じゃ、ない……」
美月「沙織の、一生の大勝負。わたしもたまには東京で遊びたいしな。よし、いっちょ付き合うか!」
沙織「えー! 室山から東京だよ! だいじょうぶ? はっとり……」
美月「親に電話して、許可取って来る。桃花にも電話する、2人泊められないか、って」
沙織「さすがははっとり! ありがとうね。ごめんね。わたしら姉妹のわがままで」
美月「それでさ……」
prrr... prrr...
沙織「はい、沙織です。って、桃花ちゃん? それがね、はっとりも付き添ってくれるって」
桃花「えー!! 二人ですかー。マジでー!?」
沙織「うん、ごめんね急に。いま、はっとりに代わる。ちょっと待ってて」
美月「もしもし、桃花か。ごめんな、急に。ちょっと沙織一人だと心配で仕方がないんだ」
桃花「それはわかったけど、家が広いぶん、ちょっと遠くなるよ」
美月「どこ?」
桃花「海老名」
美月「神奈川県海老名市かー。新宿までは少々あるなあ」
桃花「本当に一緒に行く気?」
美月「ああ、沙織が気の毒だ。それに、わたしもたまには東京で遊びたいし」
桃花「美月ちゃんが、実はここまでミーハーだったとは……」
美月「あのねえ、保護者。沙織の保護者なの、わたしは。だからお願い、一緒に泊めて!」
桃花「はー。わかりました。わかりましたってば。もう一度海老名の親戚に電話するー」
美月「助かります、桃花さん」
桃花「えっへん!」
美月「それじゃあ、また連絡頂戴ね」
桃花「はーい」
◇ ◇ ◇
沙織「ふー、やれやれ」
美月「突然何言い出すのかと思えば、三宅坂46かよー。わたしゃたまげたよ」
沙織「美月、ありがとね、いろいろ心配かけた」
美月「へっ、今更何を。それに、わたしは東京観光しに行くんだから、気晴らしに。気にすんな、気にすんな」
沙織「ありがとう、ね」
美月は沙織のノートパソコンを借りて、乗換案内を検索した。
美月「行きは、室山空港から羽田空港。天空橋で京浜急行に乗り換えて、横浜。そこから相模鉄道かな? 海老名へはそれが一番近い」
沙織「はっとり、まるでマネージャさんみたいね」
美月「誰もあんたのマネージャになった覚えはないよ!」
沙織「たしかに」
美月「で、海老名から赤坂へは、快速急行で代々木上原まで。そこで千代田線直通に乗り換えて、赤坂まで。意外とシンプルだなあ」
沙織「じゃあ、旅行会社で航空券だねえ、香枚井駅前の」
美月「なあんだ、室山空港行かなくていいんだ。これは助かる」
1時間後、沙織と美月は、香枚井駅前の旅行代理店のカウンターにいた。きちんと親の許可を取っていた。むしろ「ダメでもともと、東京観光を楽しんで」といった感じだった。
係員「では、行きは室山→羽田線、AJA552便、東京3泊4日……海老名のお友達の親戚のおうちだわね?」
沙織「はい、そうです、お願いします」
係員「では、鉄道の往復券も出しておきますか?」
美月「それでお願いします」
係員「羽田空港のターミナルビル、2つあるから間違えないようにね、国内線AJAカウンターのあるターミナルよ」
沙織「えー、あー、はい、わかりました」
美月「お前、大丈夫か?」
沙織「うーん、ちょっと東京は自信ない」
美月「もー、沙織ったらすぐにこれだ! アタマフル回転!」
沙織「はあい」
係員「ふっ、ぷっ、くすくすくすくす」
二人「えっと、私たちが、何か?」
係員「だってぇ、掛け合い漫才みたいで面白いんですもの、つい可笑しくなってしまって、ごめんなさいね」
沙織「漫才!」
美月「まあ、わたしがツッコミってとこかな? で、お姉さん、帰りは?」
係員「えーっとですね、帰りが、羽田→室山線、AJA555便、この時間までにターミナルに着くのよ。でないと、乗り遅れちゃいます」
二人「はーい」
係員「では、オーディション、頑張ってね、高槻さん、服部さん」
沙織「ありがとうございました」
美月「どうも、お手数かけました」
係員「いいえ、どういたしまして」
二人は、それから紅電香枚井駅係員の霜田拓也を訪ねた。
拓也「あれ、沙織ちゃんに服部さん、どうしたの?」
美月「こんばんは、霜田さん。それがね、聞いてくださいよー。沙織のお姉さんが、勝手に沙織を三宅坂46というアイドルグループのオーディションに応募して、写真選考に通過して、いま、東京行きの飛行機取ったところです」
拓也「三宅坂46って……あのTVに出てる、あれ? すげえなあ。おめでとう、沙織ちゃん!」
沙織「姉が勝手に応募したので、まあ、ダメもとで行ってきます!」
拓也「うん、頑張れよ! 応援する!」
駅長「おい、霜田、精算のお客さん待たせちゃいかんぞ!」
拓也「は、はい、済みません。じゃあ、君たち頑張れよ! じゃあな!」
二人「はーい」
駅長「まったくお前と言うやつは、最近女子高生にかまけすぎだ!」
拓也「重ね重ね済みません……」
上司に尻を叩かれ、駅務室に戻る霜田拓也を軽く手を振りながら、見送った後……
美月「あーあ、霜田さんったら、お説教されてるー」
沙織「何だか可笑しいわ」
美月「お前が言うな。お前が原因だ。さあ、沙織んちに帰るぞー」
室山市香枚井は、すっかり夕刻を迎えていた。
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