最終話 ラスボスが新人バイトだった頃


世界が、崩れていた。



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空は割れ、


床は砕け、


“物語”そのものが軋んでいる。



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その中心。



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“完成されたラスボス”が立っていた。



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完璧だった。



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立ち姿。


威圧感。


声。


視線。


全部。



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「これが……」


ユウキが呟く。



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「“ちゃんとしたラスボス”……」



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完成されたラスボスは、静かに言う。



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「お前は失敗作だ」



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「物語を乱し」



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「役割を忘れ」



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「勇者と馴れ合った」



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「ラスボス失格」



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静か。



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ユウキ、少しだけ考える。



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「……まぁ」



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「それはそう」



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「認めるんだ」


勇者。



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「だって」



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ユウキ、肩をすくめる。



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「俺、一回も“ラスボスっぽく”なかったし」



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「最初バイトだったし」



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「会議で怒られてたし」



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「ツッコミしかしてなかったし」



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「でも」



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完成されたラスボスが言う。



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「だから、お前は“物語”になれない」



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その瞬間。



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ドゴォォォォン!!



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圧。



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全員、吹き飛ぶ。



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「ぐっ……!」


筋肉。



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「強い〜……」


眠いの。



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「いや起きろ!!」



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勇者、剣を構える。



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「ユウキさん!」



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「分かってる!!」



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ユウキも前へ出る。



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でも。



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完成されたラスボスは、動かない。



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余裕。



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「見ろ」



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「これが“格”だ」



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マントが翻る。



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「うわ」


金髪。



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「マントうめぇ」



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「評価ポイントそこなんだよな……」


ユウキ。



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完成されたラスボス、さらに言う。



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「ラスボスとは」



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「孤独」



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「威厳」



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「絶望」



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「物語の終着点」



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「お前のように、笑われる存在ではない」



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静か。



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確かに。



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全部、正しかった。



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ユウキは、


ずっと締まらなかった。



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ミスして、


叫んで、


ツッコんで、


振り回されて。



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“完璧”とは真逆。



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でも。



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その時。



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勇者が前に出た。



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「……でも」



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完成されたラスボスを見る。



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「俺、ユウキさんの方が好きですよ」



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「え?」


ユウキ。



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「だって」



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勇者、笑う。



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「ちゃんと、“一緒にいてくれた”ので」



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静か。



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僧侶も頷く。



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「支えてくれました」



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筋肉。



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「最後まで逃げなかった」



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ドラゴン。



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「自由にさせてくれた」



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眠いの。



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「……寝かせてくれた〜……」



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「そこなんだ」



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金髪。



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「あとツッコミ」



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「最後までそれ!?」



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でも。



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ユウキ、少しだけ笑った。



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(あー)



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(そうか)



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“完璧”じゃなくても。



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ちゃんと、


残るものはあるんだ。



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完成されたラスボスが言う。



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「理解不能だ」



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「なぜ、その程度の存在に惹かれる」



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ユウキ、前に出る。



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「知らねぇよ」



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いつもの言葉。



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でも。



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今度は少し違った。



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「でもさ」



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「俺、“ラスボス”って」



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「最後に立ってるやつだと思ってた」



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魔王の言葉を思い出す。



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「でも違ったわ」



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完成されたラスボス、止まる。



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「……何?」



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ユウキ、笑う。



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「最後に、“みんなが集まるやつ”だ」



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静か。



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その瞬間。



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筋肉、前へ。



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勇者も。



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僧侶も。



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ドラゴンも。



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金髪も。



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眠いのも。



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全員、


ユウキの隣に立つ。



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「……」



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完成されたラスボス。



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初めて、少しだけ揺らぐ。



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「そんなものは……」



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「ラスボスではない」



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「かもな」


ユウキ。



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「でも」



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「こっちの方が楽しかった」



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そして。



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ユウキ、振り返る。



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「行くぞ」



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「30秒?」


勇者。



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ユウキ、笑う。



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「いや」



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「今日は――」



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全員を見る。



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「時間制限なしだ」



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静寂。



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そして。



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「おう!!」



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「はい!!」



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「グオオオ!!」



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「……ん〜……」



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「美容院予約なし!」



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「そこ確認すな!!」



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突撃。



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最後の戦いなのに。



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全然締まらない。



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でも。



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今までで、一番“チーム”だった。



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ドゴォォォォォン!!!



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世界が揺れる。



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空が割れる。



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笑い声が混ざる。



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管理側が叫ぶ。



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「物語がぁぁぁぁ!!」



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でももう、


誰も止められなかった。



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そして――



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しばらく後。



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世界は、終わらなかった。



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理由はよく分からない。



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管理側曰く。



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「前例がなさすぎて処理不能」



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とのことだった。



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魔王城・食堂。



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いつもの席。



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いつもの空気。



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勇者、カレーを食べている。



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「……で」


ユウキが言う。



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「お前、いつまでいるの?」



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勇者。



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「え?」



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「いや、もう敵対終わったじゃん」



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勇者、少し考える。



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「……居心地いいので」



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「就職したなぁ」



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僧侶、小さく笑う。



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筋肉は肉を食べ、


ドラゴンは飛び回り、


眠いのは寝ていて、


金髪は鏡を見ている。



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変わらない。



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でも。



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ユウキは少しだけ思う。



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最初。



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自分はただの新人バイトだった。



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ラスボスらしくもなく、


威厳もなく、


毎日振り回されて。



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でも。



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「……まぁいっか」



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今は。



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それも悪くないと思えた。



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その頃、監視室。



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魔王、モニターを見ながら笑う。



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「……結局」



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「一番“ラスボス”だったの、あいつかもな」



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側近、頷く。



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「はい」



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「最後まで、“自分のやり方”を貫いたので」



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世界には今日も、


勇者がいて、


魔王がいて、


ラスボスがいる。



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でも。



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その“役割”を、


どう生きるかだけは。



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誰にも決められなかった。



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【完】

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ラスボスが新人バイト イミハ @imia3341

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