最終話 最期の時

「魔王、いよいよ最期の時が来たようだな」


 僕は魔王に近づいた。


「ええい、来るな! そうだ、私はルシールよ!」


 魔王は変身を解いてルシールさんの顔になった。そんなことをしたって、もう騙されないぞ。


「ルシールさん、会いたかったよ」

「デリック君!」


 魔王は両手を広げて僕を抱こうとした。そこに僕は聖剣を突き刺した。


「ぐっ……、どうして……?」


 魔王はルシールさんの顔のままで血を吐いた。


「魔王、終わりだ!」


 僕は聖剣を引き抜いて、魔王の首をはねた。


「ぎゃあああああっ!」


 魔王は首だけになって断末魔を発した。そして魔王は消滅した。これは聖剣の魔族特攻によるものだ。


「ルシールさん、終わったよ……」


 僕は僕の中にいるルシールさんに話しかけたつもりだったが、返事は無い。


「やったやった! 魔王を倒しちゃった! すごい、デリック!」


 カトリーヌが僕の背中に抱き着いてきた。


「う、うーん……、魔王がいない。倒したのか……?」


 エロイーズが起きてきた。こいつは時間稼ぎぐらいにはなったのだろうか。


「帰ろう」


 僕はジョフロワの遺体を背負って、魔王城を出た。ラザールと合流して、馬車で帰った。国に帰った僕たちは盛大な祝勝パーティで出迎えられた。後にジョフロワは国葬にされた。エロイーズは僕が裏切ったことを言い続けているらしい。


 僕はオーレリアと結婚して、公爵位をもらった。ただの平民が貴族か……。しかも公爵……。オーレリアは大事にされてるんだな。


 あれから六十年が経った。僕はベッドで寝た切りの生活を送っている。日に日に衰えていくのがわかる。僕ももうおしまいか。ルシールさんはあれ以来話しかけてこない。


「デリック、おかゆができたわよ。ふーふー……」


 オーレリアが毎日僕におかゆを食べさせてくれている。オーレリアも年を取ったが、まだ元気だ。僕は今日死ぬ気がする。オーレリアに別れの挨拶をしておこう。


「オーレリア、いつもありがとう。僕はもうすぐ死ぬみたいだ」

「今日はいつになく弱気ね。大丈夫よ。私が死なせないわ」


 オーレリアはそう言うと去ってしまった。最期は一人か。それもいいだろう。僕は目を閉じた。魔王と戦って勝った。それだけの人生だったような気がする。


「デリック君」


 久々にルシールさんの声を聞いた気がする。僕は目を開くと、そこは辺り一面白かった。


「ルシールお姉ちゃん、ここはどこ?」

「ここは天界よ。デリック、あなたは死にました」


 僕は十二歳の頃に若返っていた。ルシールさんはあのころのままだ。


「天界? そっか……、ルシールお姉ちゃんは何で天界にいるの?」

「言ったでしょ。私たちはいつも一緒だって……。私も一緒に天界に来たのよ」

「てことは、これから一緒に過ごせるの?」

「ええ、ずっと一緒よ……」


 ずっと一緒か。ルシールさんとは生きて一緒になりたかったな。でもこれから楽しく過ごせばいいか。




 完

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魔族に好きだった近所のお姉さんを殺された闇落ち勇者はまだ未練を残している あんこくじだい @ankoku_jidai

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