戦前、阿波の山村で起きた陰惨な事件。
それは余りにも謎が多く又、決して人々の
目には留まらなかったかも知れない。
山の中の薄暗い藪に閉ざされた古井戸、そして
過去から甦った亡者の如き
悍ましい『記録』の数々が見つかる
それまでは ───
と或る山中に屋敷を構える舊家の主とその妻
長男と嫁、女中の五人と、異変を察知して
調査に出向いた村の男二人が惨たらしく
殺されているのが発見される。
長男夫婦には二人の子があったが、後日
無事に山の中から救出される。
「狐の姉様に遊んで貰った」の証言が
事件を更に不気味なモノへと変貌させる。
調査が進む毎に見えてくる、この屋敷の
悍ましく歪んだ 歴史 と 怨念。
集落から離れた所に在るその屋敷へは
女中や嫁を出す事を禁忌としていた。
狒狒、舞首、山奥の一つ家、狐の姉様
魑魅魍魎や妖怪変化、因習、伝承…。
阿波には昔から狐はおらず、それも又
何某かの符牒を示唆する。
モキュメンタリーなのか、それとも実証か。
既に定評がある作者の筆に呑み込まれる。