第12話 父と娘のデートっつ!

うばっつ!〜ある中年ウーバー配達員の物語〜第12話 父と娘のデートっつ!


配達から帰宅し、汗を拭いてソファに倒れ込む。そのとき、スマホがピコンと鳴った。


LINE。送り主:娘。内容はたったひとこと。


「うまいもん食わせろ。」


え、なにそのフラグ立ててくる感じ。俺、今日の報酬600円だけど……?


でも、嬉しいんだよな。こっちから誘うと面倒くさがるくせに、たまにこうして急に「来る」感じ。ツンデレか。


返信。


「いいよ。何食いたい?」


即レスで返ってきた。


「焼肉」


雑ゥ!でもOKだ!よろこんで!


当日、待ち合わせ。駅前に現れた娘は、ちょっと大人っぽくなってた。


社会人の顔、してる。だけど手を振る時の照れた感じは、昔のまんま。


店に入り、無言でメニューを睨む娘。


「お前、目力強くなったな?」


「仕事で鍛えられてんの」


とか言いながら、タン塩→カルビ→ハラミの三連コンボを即オーダー。


さすが俺の娘、肉の動線が完璧。


網の上でジュウゥと音を立てる肉たち。いい香りが立ち込める。


「焼くのは俺がやる。今日は父ちゃんDAYだ。」


「じゃあ、ちゃんと裏返すタイミング見てよ?」


くっ、プレッシャー高ぇな。


肉を焼きながら、娘はぽつりぽつりと喋り出した。


上司がクセ強い


昼休みの弁当がしょっぱい


お母さんが靴下の並び順にうるさい


……そのへんのOLが喋ってそうな愚痴なのに、娘ってだけで全部愛おしい不思議。


「で、父ちゃんはさ、最近どうなの?」


「ウーバーやってる。あと、アニメ観てる。」


「やっぱり…」


呆れ顔の向こうに、笑ってる目がある。


「変わんないね。そこがいいけど。」


ちょっとグッとくるじゃん。


帰り道、駅までの途中。信号待ちで、娘が小さく呟いた。


「今日はありがとね」


その一言で、全部チャラになるんだな。過去のLINEスタンプの「キモい」すら浄化される。


「また、なんか食いたくなったら呼べよ」


「じゃあまたLINEするね」


そう言って、改札の中に消えていった。


家に帰ると、スマホがまた光った。


「今日の焼肉、おいしかった。またお願い」


心の中で、ガッツポーズ。親って単純でいいよな。

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