うばっつ!〜ある中年ウーバー配達員の物語〜(全28エピソード)
カトーSOS
第1話 離婚したっつ!
うばっつ!〜ある中年ウーバー配達員の物語
第1話 離婚したっつ!
「ねぇ、離婚してくれない?」
――晩飯のスープを鼻から噴いた。
その日、俺はクノールのコーンポタージュを飲んでいた。
しかも、とろみMAXのやつ。悲劇だ。鼻腔が潰れるかと思った。
「…は?」
ティッシュで顔を拭きながら聞き返す俺に、
妻は何の感情もない声で言った。
「もう限界なのよ。あなたといるの。」
そうか、限界だったか。
でも正直、こっちはそこまで不満なかったんだけどな。
25年も連れ添えば、そりゃ会話も減るし、スキンシップも絶滅する。
でも、それって"空気のような夫婦"ってやつじゃなかったのか?
空気だったのは、たぶん俺の存在だけだったらしい。
調停はスムーズだった。
家庭裁判所の別室に座りながら、俺は静かに考えていた。
「これって…勝ちなのか?負けなのか?」
預貯金は2,000万円。ローンも完済済み。
財産分与は半々。家は俺の名義だったけど、妻に言った。
「住みたきゃ住めよ。家あげるよ。」
すると、妻は静かに答えた。
「あなたのニオイが染みついてるから、無理。」
あまりの潔さに、逆に笑えてきた。
いや、マジで俺、そんなクサかった?
離婚届に署名して、印鑑押して、手渡す。
それで終了。夫婦25年のエンディングは、こんな一枚の紙で終わるらしい。
裁判所の駐車場で、元妻の車が小さくなっていくのを見送った。
そのとき――
「あれ、俺、めっちゃ気楽になってね?」
心のどこかが解き放たれた。
肩の荷が下りたどころじゃない。羽が生えたような気分だった。
「俺はこれから一人だ。」
そう呟いて見上げた空は、やたら広くて、眩しくて。
まるで人生が“はじまった”感じだった。
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