MER:AI《ミライ》|第34話「私の未来」


ミライは一人、AIONの中へと消えた。

そして、残されたユーゴは——。




 第34話「私の未来」


頬に風が当たる。

閉じた瞼の向こうで、温かい光を感じる。


朦朧とした意識の中、ユーゴは目をゆっくりと開けた。


空が見えた。

雲間から、太陽の光が覗いている。

その間を縫うように、AIONの星座が光っている。


視界をずらすと、AIONの管理塔が、半ば崩れ落ちていた。

その頂上はもはや原型を留めていなかった。


ここは——?自分はどうしてここに——


「——うっ」


上体を起こそうとしたが、痛みで起き上がれない。


その時、ユーゴは霞む目で見た。

自分の身体に、自身の黒いジャケットが掛けられているのを。


……ミライ?


呼ぼうとした声は、音にならなかった。


「ユーゴ!」


自分を呼ぶ声と共に、駆け寄る足音が聞こえる。


カイ…。


「よかった、生きてる!」


志保…。


ミライは。ミライは、どうした…?


皆が口々に何かを言っているが、それも徐々に聞こえなくなってくる。

視界が狭まる。


視界の隅、瓦礫の向こうに、黒いロングコートが翻るのが見えた。


神城…零。


ユーゴは、そのまま、再び意識を失った。



---



それから、どれくらい経ったろうか。


ユーゴは一人で、この場所に、塔の元に訪れていた。


脇腹を抑えながら、ゆっくり歩く。

立ち止まっては、呼吸を整える。


手には、黒いジャケットを掴んでいた。


かつて、街を見下ろしていた管理塔。

AIONの中枢。


瓦礫の山が、空へ向かって口を開けていた。

立入規制の柵が、申し訳程度に張られている。

誰も、近づこうとはしない。


ユーゴは、その柵の前に立った。

あの日のことは、誰も何も知らなかった。

ただ、誰かが、俺を塔の外に運び出し、あの場所に置いていった。


ミライが、何故AIONに会いに行くと言ったのか。

ミライが、あの後どこへ行ったのか。

本当に、何も、分からなかった。


ただ、噂では、あの事件以降AIONが再編されたらしいということを、桐生から聞いた。


空には、相変わらずAIONの星座が瞬いていたが、その光はどこか温かく感じた。


ミライ——。


ユーゴは、しばらくずっと、その星の瞬きを見つめていた。

ジャケットを握りしめながら。




どれだけそうしていただろう。


辺りはもう、薄暗くなり始めていた。

ユーゴは、握りしめたジャケットに目を落とした。


あの日、ミライが自分に残した、唯一のもの。



AIONに、選別されたあの日。


俺はずっと、あの日に縛られて生きてきた。


けれど、お前がいたから、俺は初めて——


ユーゴは、もう一度空を見た。

遠いビルの谷間に、朱く染まる稜線が光る。


「ミライ…。俺は、生きるよ」


「自分の、未来を」


風が吹いた。

ユーゴは、黒いジャケットを羽織ると、塔に背を向けて歩き出した。


ジャケットの裾が、風に吹かれて揺れていた。





 次回 最終話「雨上がりの空」


長く続いた雨が、もうすぐ、止む。




 ※制作について


本作品は、作者による企画・構成・編集をもとに制作したオリジナル創作小説です。

制作過程の一部にAI生成・AI補助ツールを使用していますが、物語設計、本文の調整、加筆修正、最終編集は作者が行っています。

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