MER:AI《ミライ》|第33話「最後の接続」


たった一度の口づけを残し、ユーゴは意識を失った。

崩れゆく塔の中、ミライは一人、AIONの元へ向かう。




 第33話「最後の接続」


崩れた天井の隙間から、白い光が、ユーゴの上に落ちている。

ミライは、ユーゴをそっと床に横たえた。


ユーゴの肌は温かい。

まだ、間に合う。


それから、ミライは、先ほど脱がせた黒いジャケットを拾い上げる。

それを、そっとユーゴの身体に被せた。


塔がまた揺れた。床に亀裂が走る。

長くはもたない。


ミライは、壁に手を当てた。

指先の回路紋様が、淡く光る。


崩落で死んだはずの系統の、その奥に、まだ動くものを探す。

保守用の搬送設備。

ミライはそれを見つけ、たぐり寄せる。


ミライの手から伸びる淡い光が、壁を伝い、床を伝い、広がっていく。

広間の出口、その横に、搬送エレベーターの口が開いた。



---



床の一部がゆっくりと沈み始める。

ユーゴは、エレベーターの庫内で横たわっている。


このまま階下へ。


ミライはその傍らに膝をついた。

意識を失っているユーゴの顔を、ミライは見つめた。


「……ユーゴ。私は、いきます」


ミライは一人呟いた。


「だから、どうか——」


ミライは、ユーゴの手を取り、両手で包んだ。

そして、名残惜しそうに、ユーゴの胸の上に彼の手を置いた。


エレベーターが閉じる。

淡い光に包まれながら、エレベーターは階下の闇へ、ゆっくりと降りていく。


光の差す広間に、ミライは一人残った。


そして、もう一度、塔の最上階へと向かった。



---



青白い光が、空間に満ちていた。

祭壇の間にミライは立っていた。


崩れゆく壁。瓦礫の落ちた床。


青白い光が、中心で渦巻いている。

ミライは、その光の前に立った。


-塔が 崩れます-


AIONの声が、再び響いた。


-でも 私は 網の中で 存在できる-


-この都市が 私そのもの-


-零の あがきは 無駄に終わります-


AIONは淡々と言う。


-さあ もう一度 私の中へ還りなさい-


無数の青白い糸が、ほどけるように伸びて、ミライを再び包む。

指先から、境界が溶けていく。


「AION。あなたは、私を恐れている」


飲み込まれる光の中、ミライは言う。

その声には、不安も、焦りもなかった。


「あなたは、私がここに来ることを、待ち望んでいた」


「けれど、同時に、私を否定したのです」


ミライは、まっすぐにAIONを見据えた。


「だから、私を、あの地下深くに眠らせた」


-なにを 言うのですか-


「私がここに来ること。それは、あなたの存在を揺るがすことになるから」


「今の私は、理解できます」


黄金の瞳が、揺れた。


「感情を否定し、感情を管理するあなたが、感情を欲した」


「あなたが正しいと思っているものを、私は内側から問う存在となる」


-違います 私は 私は-


「違いません」

「あなたは、ずっと、矛盾の中にいたのです」


AIONの青白い光が、ミライの淡い光に包まれる。


-あなたは 危険 危険-


-私が 私でなくなる-



光は眩く、淡い静かなそれで満たされる。


ユーゴ。


私にできることが、ありました。


だから、私は、選びます。



ミライは、目を閉じて微笑んだ。


ミライの淡い光が、AIONの青白い光と、混ざり合っていく。


ミライは薄れていく自己の中で、思い出していた。


彼の温かい手を。雨の匂いを。名前を呼ばれた、あの声を。


すべてを、抱いたまま。

ミライは、光になった。



光の中で、一つの輪郭が結ばれた。


額の紋章。


そして、黄金色と、淡い色の二つの瞳。


両の目がゆっくりと閉じられ、光の中へと消えていった。



---



祭壇の間が、崩れた。

天井が落ち、壁が砕け、光は瓦礫の下に消えていく。

光の渦も、輪郭も、何もかも。


崩落の音だけが、塔の奥に響いていた。


そして、それも、やがて止んだ。




次回 第34話「私の未来」


ユーゴが目を覚ますと、その胸には、

自分の黒いジャケットがかけられていた。




※制作について

本作品は、作者による企画・構成・編集をもとに制作したオリジナル創作小説です。

制作過程の一部にAI生成・AI補助ツールを使用していますが、物語設計、本文の調整、加筆修正、最終編集は作者が行っています。

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