鉱山都市ファルメルを訪れた冒険者アリアは、問題児「〈沈黙〉のガロード」の教育係を押し付けられる。
ほとんど喋らない大食漢のガロードと、自由を求めるアリア。
そんな噛み合わない二人の奇妙な冒険が始まっていく――。
人工太陽(モノ・ソル)や魔導列車、魔紋認証など、魔法と文明が融合した緻密な世界観が本作の魅力。
読み進めるほどに、イドリア帝国だけでなく、エトノーシア法国をはじめとした大国や、大陸各地の山脈、森林、そして未踏の魔境へと世界が広がっていきます。
魔物との命懸けの戦闘や国家間の問題など、重厚でシリアスな展開がありながら、個性的なキャラクターたちによるコミカルな掛け合いが絶妙なアクセントになっています。
なにより自由奔放なアリアと、無口でマイペースなガロードの「絶対に相性が良くないのに、なぜか成立してしまう」コンビが面白く、思わず笑ってしまう場面も多くあります。
緻密な世界観とシリアスな冒険、そしてユーモアが同居した、ロードムービー的な冒険譚。
二人を待ち受ける奇妙な旅を、ぜひお楽しみください。
軍に逆らい、家から逃げ出したアリアは、各地を転々としながら依頼を受けて暮らす銀等級冒険者。
「冒険者は自由だから」と考え、どこか一か所に定住するつもりもなく生きていたところ!
ギルドで偶然〈沈黙〉のガロードと関わることになり、一緒に鉱山を調査する中で、〈鐵喰い〉という変異体と戦うことになります。まったく噛み合わないように見えた二人が、それぞれのやり方で戦いながら少しずつ息を合わせていき、最後には剣でもまともに通らない甲殻をツルハシで掘り崩しながら攻略していく流れが面白かったです。魔法の詠唱や属性、冒険者の等級やギルドの依頼の仕組みといった設定も、物語を追いながら自然と分かるようになっていて、世界観も難しくなく理解することができました。
しかし、運命はそんなアリアをなかなか自由にしておきたくなかったのか、貴族令嬢のエステルが本当に空からアリアの前に落ちてきたことで、物語が本格的にややこしくなっていきます。他国から飛んできたエステルのせいで、アリア自身まで困った立場に置かれることになり、どうにかこの状況から抜け出すために新しい計画を立てていく流れも新鮮でした。
ほとんど喋らず、食べることにしか興味がなさそうなガロード、少し一人にしておくと壁の染みと友達になってしまうエステル、そしてその二人の間でずっと頭を抱えるアリア。三人の性格がまったく違うので、一緒にいる時の会話や状況も楽しく読めましたし、これからどう展開していくのか楽しみです。
**冒険と戦闘、キャラクターたちのコミカルな会話も楽しめるハイファンタジーが好きな方におすすめ!**
アリアの一人称が、この作品のエンジン。悪態、舌打ち、損得勘定、そして意地とか、そういうものが一人称の地の文にぎっしり詰まっています。読んでいる間ずっと彼女の体温がすぐそこにあるような錯覚にもなるのですが、こういう小説でよく感じるうるささはない。おそらく綿密に練られたアリアの魅力、賢さやどうしようもない人の良さ、人間としてのあり方が、丁寧に重ねて描かれているからだと感じます。ガロードも面白い。ありがちなただの無口キャラじゃない。アリアのツッコミが冴えてるところは笑いました。
「今日よりもちょっとだけマシな明日のために」というコピーが、読み終えてじんわりと沁みてきます。