静謐、無機質、そして或る筈のない 何か。
これは某宗教団体が主導する『出生回避』の
記録である。
貧困、暴力、孤立、そして新たな命。
『苦しみの連鎖を断つ事が慈悲である』との
理念の下で行われる出生回避。それは
外部からの記録を必須としている。
主人公は、その記録の為に 対象女性 を
事細かに観察する。
観る、そして 記録する。
その単調な繰り返しは心臓の鼓動の様でいて
誰しもが容易に想像できるものだったが。
作者の徹底したリアリズムは、有機質の
生々しさと同時に、正反対の無機質を
感じさせる。時間のながれ、規則的な音、
文字にまでそれは染み込んでは
想像しなかった 幻影 を生じさせる。
知覚の狂いなのか、それとも。
静謐な白い部屋の中に それ は
いつの間にか紛れ込んでいる。
何一つ、狂いのない世界の中で。