昔の哲学者ははイデアを物質の外に置いたが、この作品を読むと実は逆なのではないかという感覚に襲われた。
記憶のありかは海馬なのかもしれないが、その本質はもっと具体的な匂い物質の中に含まれているのかもしれない。
その物質は過去に肉体へと侵入し海馬の中に住みついたから、香りと記憶は切り離さずに定着するのだろうか。そんなことを思った。
また、人の記憶へと届く匂いを設計する調香師を書いたこの作品は、その過程を机上の空論として終わらせない。読み進めるうちに、これは実際にそうなのかもしれないと思わせる説得力がある。
オススメです。