第2話 謎の図書館へ
「バーチャルな図書館だから、審査が通れば、順番待ちなしですぐ読めたって、投稿している人多いよね」
レイカは会員登録に必要な情報を入力しながら、傍らに用意したVRヘッドセット、Mega Curiosity3に視線を走らす。高校受験合格祝いで両親に買ってもらったものだから、もう十年も前のものだ。爆発的に売れた機種だから、まだ対応環境に含まれていたのは運が良かった。
「Curiosity、最後に使ったのはいつだっけ? 確か弟とゾンビを倒すシューティングゲームにはまったのが大学二年の時だよね? 不具合が起きないといいけど」
規約と同意を求めるボタンが表示された。レンタルコミックサイト等でよくあるパターンの規約だ。但し閲覧は一度に一タイトルずつという点、複製防止の観点からVRデバイスを介したメタ世界での閲覧のみが可能な点、その本のあらすじまたはどのくらい読みたいかの願望の強さをアピールし審査に合格した場合だけ利用可能という三点が、普通の図書館やコミックサイトと異なっている。
「待てば無料とかで、毎日少しずつしか読めないよりいいよね」レイカは規約の内容を慎重に確認してから、同意ボタンをクリックした。
すぐに書籍名と、あらすじまたはどれくらい読みたいかの思いを記入するダイアログボックスが表示される。
一度に一冊しか借りられない規則だから、一番読みたい『やさしい悪魔のころしかた』を登録したいところだが、このサイトの規則では心の底から読みたい本であることをアピールして審査に通る必要がある。
「ミステリーだから、内容ほとんど公開されてないんだよね。作者が好きとかの理由では選ばれないらしいし」
思案の末に、感想が結構ネットに上がっている『恐竜たちには訪れなかった夏』を申し込むことにした。悪役令嬢ものはこれまで大量に読んだ同じジャンルのコンテンツと混同しそうなので見送ることにした。
タイトルは認識された。このバーチャル図書館に蔵書はあるようだ。続いてSNSで調べた一番評価の高かった書評を自分なりに解釈して、結末を想像して編集したあらすじを登録し、申請のボタンをクリックした。
『白亜紀末に地球を訪れたエイリアンに救出された恐竜たちの物語。主人公は草食恐竜の少年で、恋人とともに冬を迎えつつある北半球のローラシアから、地峡帯を越えて南半球のゴンドワナに向かう大縦断と呼ばれる旅の途中のことだった。エイリアンの宇宙船に拉致されると、そこには既に七種類の恐竜のカップルがいた。エイリアンは彼らに、地球が滅亡する前に標本として採取したことを告げる。地球を救って欲しいと懇願する恐竜たちに、エイリアンが提示した条件は彼らとゲームをすること。七組のカップルが脱落し、最後の一組となった主人公たちの最終ゲームは微妙な結果に終わった、そして下された判定と地球の運命は……』
なかなか審査結果が表示されないので、レイカはいらいらしてきた。
およそ三分が経過した時、承認メッセージが表示される。
『ご要望の書籍の貸出に関する申請が承認されました。図書館コンシェルジュAIの指示に従ってください』
「よっし、これで重要なハードルはクリアできた。もうすぐ、読めるね!」
小さくガッツポーズをして、VR図書館の使用方法説明の動画を視聴しながら、指示に従ってVRヘッドセットを光ルータにWiFi接続し、頭部に装着してスイッチを入れる。
数秒のローディング中メッセージに続いて、古城のような荘厳なたたずまいの木造建築の図書館が姿をあらわした。
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