盲目の語部シャムスと一国の王子カマル様が入れ替わり、二人で国を変えていくバディもの。
国を救う王道ファンタジーでありながら、アラビアン情緒たっぷりな世界観や語部シャムスの聞き惚れる語り口、息もつかせぬ暗躍と策謀の緊張感で、この作品にしかない魅力がぎゅっとたっぷり詰まったファンタジーでした。
特に語部の語りのシーンは、物語の中のさらに語りという二重構造のような奥行きを生み出して、アラビアン・ファンタジーをより一層匂い立つエキゾチックな不思議な物語の世界へ招かれてしまいます。それでいて、より一層物語の世界をくっきりと浮かび上がらせて理解できるのが素晴らしく不思議で面白く感じました。
主役二人シャムスとカマルの関係性も作品の魅力の一つでした。初めは契約によって結ばれた二人が、一夜を乗り越えるにつれて、絆が生まれて成長していく姿が素敵でした。ほかにも王宮や路地裏で出会う人物たちそれぞれ魅力的で、キャラクターが生き生きと輝いていました。
剣でなく言葉によって戦う二人のアラビアン・ナイト・ファンタジーでした。眠れない夜のお供にぜひお勧めしたい物語です。
こちらの作品は、王子と貧しい語りべの少年の「入れ替わり」。
入れ替わり展開は、マーク・トウェインの「王子と乞食」以来、王道でもある。王道とはつまり、"間違いなく面白い"の代名詞。そこへこの作品ならではの「匂い立つような空気感」と「何重にも意味を持つ美しい言葉」の力が合わさり、"メッチャ面白い!"になっています。
巧妙に仕組まれた陰謀を、あくまで「物語を語り、崩す」展開なのですが、「どう語って崩すのか?」が見どころです。
主人公は、王子カマルと語りべのシャムス。ブロマンスではあるものの、どこまでも爽やかで魂同士の結びつきを感じるような関係なので、どんな人にも共感できると思います。
この2人の視点を通してみる王宮や路地は、香りや手触りなどの五感情報から訴えてくる。没薬の香りや絹の重さ。あるいは砂や泥の匂い、ひび割れた指先から伝わる手触り。これがどこまでもリアルに感じる。
一方で、セリフは直接的なものよりも、幾重にも意味が込められた言い回しが多く、これがまたお洒落でカッコイイのです。
リアルな質感と詩的なセリフ回しが合わさって、この作品ならではの幻想世界を生み出しています。
私にクリティカルヒットしたのは、王子に成りすましたシャムスが王宮で出会う、知的な役人たち!
特に好きだったのは、宰相ファイサルや、教育係のナーズィル。2人とも有能な人物なので、正体がバレないかとヒヤヒヤさせられました。ここですべて書ききれないのが惜しいですが、この2人、とても良いので最後まで読んでいただきたい!
最後にひとこと。ナーズィル様、良いですよ。私の推しを見てください。
まずあらすじを拝見した時、その設定の妙に深く感心しました。
装い、入れ替わるという緊張感のある設定は、間違いなく物語の面白みを底上げするもの。
そして語りの力というのは、高尚な落語家さんやアラビアンナイトを彷彿すると同時に難しいものでもあるだけに、そのチャレンジ精神にとても惹かれました。
実際に読み進めてみると、あらすじの想像を超えてくる適切な描写や説明で、すんなりと物語の世界に入っていくことができました。
夜や月といったものが、入れ替わることの緊張感をさらに強調するという卓越した工夫も鮮やか。
まだ物語は途中ですが、先の展開がとても楽しみです。