音楽の死んだ街、シュタインベルク。
この物語の魅力は、やはり圧倒的な「音」の描写にあります。
音楽を知らない少女は、靴音の響く音を、自分の体内の鼓動の音も、咲く花をもリズムに変えて、「音楽」を感じる。
少女から生まれるその「音」は、穏やかで透き通っていて、柔らかな陽光のようにあたたかい。
読みながら感じたのは、「音楽が音楽である理由」とは何か、という問いでした。
それはきっと、愛と呼べるような、あふれる感情そのものなのではないか――
そんなふうに思わせてくれる物語です。
五年後、十年後、二十年後。
【わたしのうた】がどんなふうに生まれ変わっていくのか、思わず想像してしまいます。
そこには苦味や悲しみもあるかもしれない。
それでも、この少女の歌は、変わらず美しい愛に溢れているはずです。