第4話 ずっと好きだった

 安宿の寝台に腰掛けた有栖川の背中から、醜く這い回っていた黒い痣が消えていく。


「……本当に、治ってる」


 有栖川は信じられないものを見るように自分の腕を何度も見返し、目を丸くしていた。首筋から二の腕、そして細い指先に至るまで。どす黒く変色し、壊死の兆候を見せていた皮膚が、嘘のように透き通った本来の白さを取り戻している。


「……ありがとう、影山」


 それは、これまでの虚勢や演技を一切排した、心からの、そして真剣な感謝の響きだった。


「ああ」


 短く応えた、その瞬間だった。


「えいっ」

「ふぁっ!? な、何すんだよ!」


 弾かれたように動いた有栖川が、俺の腕に思い切り抱きついてきた。顔を埋めるようにして、ぎゅっと力を込める。彼女の体温と、女の子特有の香りが鼻腔をくすぐった。


「恋人なんだから、これくらい普通でしょ」

「い、いきなりすぎるだろ! 少しは順序を考えろ!」

「……影山、生きててよかった」

「……」


 不意に漏れたその一言に、反論しようとした言葉が喉の奥で詰まった。


 有栖川は顔を上げず、俺の腕に柔らかい頬を押し付けたまま、消え入りそうな声で続けた。


「あの時……城門が閉まった時、あたし、本当に後悔したんだから。あんたがあんな風に追い出される前に、もっと早く動けばよかったって。ずっと、そればっかり考えてた」

「……」

「だから、また会えて本当によかった」


 俺は何も言えなかった。


 実のところ、今の俺はそれどころではない。


 有栖川の豊かな胸が俺の腕に容赦なく押しつけられており、そのあまりに生々しい感触が気になって、まともな思考が霧散していく。


 ……事故物件のくせに、何なんだこのスペックの高さは。


「ねえ、影山」

「な、なんだよ」

「服、買ってほしい。今の格好、さすがに恥ずかしいし……」

「……だな。それは同感だ」


 現在の有栖川は、泥に汚れた奴隷服を身にまとっている。その卓越した美貌とのギャップもあり、このまま街を歩けば、確実に良からぬ注目を浴びてしまうだろう。


「あと、刀も欲しい。あたし、一応【剣聖】だし。丸腰だと、なんだか落ち着かないの」

「刀か……。心当たりがある。ついてこい」


 俺は有栖川を連れ、馴染みの店へ向うことにした。


 街の中心部から少し外れた路地裏に、こぢんまりとした【万屋 明智商会】の店構えがあった。店先には日用品から冒険者向けの装備まで、雑多な品物が所狭しと並んでいる。


 カウンターの奥で帳簿を眺めていた男――明智は、扉が開く音に顔を上げた。


「おや、玄兎殿。いらっしゃい。今日は新作のポーションでも持ち込まれに来ましたか……」


 明智の視線が、俺の隣に立つ有栖川へと移った瞬間、バサリと音を立てて帳簿が床に落ちた。


「……あ、有栖川殿……?」


 明智の細い目が、驚愕に見開かれた。有栖川の全身を、上から下まで穴が開くほどに凝視する。薄汚れ、切り刻まれた奴隷服。


 そして胸元に残る、従属紋の痕跡――。


 その記号が何を意味するのか、この抜け目のない商人が理解できないはずもなかった。明智の顔から、急速に血の気が引いていく。


「な……なぜ、我が学園のマドンナの剣聖様が、そのような……奴隷のなりを……?」


 有栖川は視線を落とし、少しの沈黙のあと、冷え切った声で言った。


「グランタリアの上位貴族に、側室にしてやると言われたのよ。……断ってもしつこく寝室まで押しかけてきたから、前歯を二本、へし折ってやったわ」

「……」

「そうしたら、翌朝には毒を盛られて動けなくなって……。気づいた時には、地下の奴隷商に売られてたのよ。死んだことにされてね」


 明智は深く吸い込んだ後、愛用の扇子をゆっくりと、儀式のように開いた。


 「……なるほど。あの腐り果てた国の連中なら、やりかねませんな」


 俺も同じ結論に辿り着いていた。逆らった剣聖を黙らせるために毒を盛り、死んだことにして奴隷商へ売り払う。宰相の周辺にいる連中なら、それくらいの悪行は造作もないだろう。


「にしても」と明智は俺に視線を向け、目を丸くした。


「玄兎殿、まさか有栖川殿を……買ったのですか?」

「今朝の奴隷市で見かけてな」

「……いくらで?」

「金貨1枚だ」


 明智の口から、ヒュッと間の抜けた音が漏れた。


「き、金貨……1枚……!? あ、相手は剣聖様ですぞ!?」

「死に体だったからな、徹底的に値切ってやった」

「値切った……。値切ったのですか、剣聖様を……。貴殿という男は、恐ろしいというかなんというか……」


 しばらく呆然と天を仰いでいた明智だったが、やがてパチンと扇子で口元を隠した。恐る恐る、それでいて抑えきれない好奇心を瞳の奥ににじませ、声を潜めて尋ねてくる。


「……して。お二人は今、いかなるご関係で?」

「ともだ――」

「彼女よ」


 俺が「友達」と言い切るより先に、有栖川が俺の腕を強く引き寄せ、所有権を主張するように宣言した。


「あたしの裸を見たんだから、今更なかったことになんてできないわよ。責任取ってもらうんだから」

「だから、あれは治療の一環だと言っただろ」

「彼女よね? 違うって言うんなら……今ここで影山を殺して、あたしも死ぬから」

「……か、彼女だ」


 パサリ、と明智の手から扇子が滑り落ちた。


「か……彼女……。玄兎殿に、彼女……。あの、孤高を気取っていた玄兎殿に……! というか、裸を見たとは一体どういうことですかな! そこのところを拙者にも詳しく!」

「恋人なんだからそれくらい普通でしょ。あんた、ちょっとうるさいわよ」

「さ、左様でございますか……。それは失礼いたしました……」


 明智は深々と頭を下げた。


 最後に「羨ましすぎる……」と血を吐くような小声が漏れていたが、それは聞こえなかったことにした。


 有栖川は満足げに胸を張り、俺の腕に再び抱きついた。その弾力が、再び俺の理性を削りにかかる。


「ところで明智。こいつが使える刀はあるか。丸腰では落ち着かないらしい」

「剣聖様に、刀を……。ふむ。なればちょうど、有栖川殿に相応しき一品がございましてな」


 明智はカウンターの奥、厳重に保管されていた棚から、漆黒の鞘に収められた細身の刀を取り出した。


「先日、訳ありの冒険者から買い取った業物ですぞ。銘は『朧月おぼろづき』」

「いくらだ」

「玄兎殿には日頃から、ポーションで多大な利益を頂いておりますからな。……どうぞ、お代は結構です」

無料ただでいいのか?」


「はい」と明智は、商人特有の計算高い、しかし誠実な微笑を浮かべた。


「将来の英雄たる剣聖様に恩を売っておくのは、この明智にとって、何物にも代えがたい長期的な投資にございますからな」


 打算丸出しの言い分だが、彼なりの友情の示し方だと俺には分かった。


 有栖川が刀を受け取り、すらりと抜身を晒した瞬間、その場の空気が一変した。


 先ほどまでの浮かれた笑顔が霧散し、刀身を凝視する瞳に、万象を断ち切る【剣聖】としての峻烈な輝きが宿る。無駄を一切排した動作で、数度、空を斬る。鋭利な風切り音は、目の前の「ただの女の子」が仮初めの姿に過ぎなかったことを思い出させるには十分すぎた。


「……これ、いいわね。手に馴染む」

「お気に召していただけましたかな。光栄に存じます」


 有栖川は刀を流麗な動作で鞘に収めると、満足そうに腰に差した。

 威圧感は消え去り、またいつものギャル然とした顔に戻っている。


「ねえ影山、次は服よ。あたし、可愛いのが着たいわ」

「……わかったよ。次は服屋だ」


 店を出ようとした際、明智が俺の耳元に顔を寄せてきた。


「玄兎殿。剣聖様を『身内』に引き入れるとは……。この明智、期待で武者震いが止まりませんぞ。これは、グランタリアへの復讐も、思っていたより早く動けるかもしれませんな」

「大げさだ」

「大げさではございませんぞ。最強の剣と、最高の薬師。そして……この稀代の商人が揃ったのですからな」


 明智の瞳の奥には、冷徹なまでの算盤の音と、亡国への痛烈な反撃を予感させる、暗い野心の火が灯っていた。


 明智の店を出た後、俺たちは大通りに面した服屋へと向かった。


「わあ……!」


 店の扉を開けた瞬間、有栖川の目がパッと輝いた。


 棚という棚に所狭しと並んだ衣服を前に、有栖川はまるで子供のように駆け回り始めた。これはどう、あれはどう、と次々に服を手に取っては俺に向けてくる。


「影山、これは?」

「……悪くないじゃないか」

「こっちは?」

「まあ、いいんじゃないか」

「これは!?」

「お前が着るんだろ、好きにしろ」


 有栖川は数着を抱えて試着室へと向かった。俺はその場で待つつもりだったが。


「影山、来て」

「は?」

「来てって言ってんの」


 カーテンの隙間から伸びてきた手が、俺の袖を掴んだ。


「ちょ、待て待て待て! なんで試着室に俺が入るんだ!」

「彼氏なんだから当たり前でしょ。どっちが似合うか見てほしいし」

「それとこれとは話が――」

「早く」


 問答無用で引きずり込まれた。


 試着室は狭い。有栖川との距離が、嫌でも縮まる。しかも有栖川は躊躇なく奴隷服を脱ごうとしている。


「ちょっと待て! お前、宗教の戒律はどうした! 婚姻相手にしか肌を見せないんじゃなかったのか!」


 有栖川は一瞬動きを止め、それから平然と答えた。


「今更何言ってんのよ。一度裸を見られてるんだし、もう結婚したも同然じゃない」

「はぁああ!? 結婚!? 待て! いつそんな話になったんだよ!」

「うるさい、前向いてて」


 俺は壁に向かって、固く目を閉じた。背後で衣擦れの音がする。それだけで心拍数が跳ね上がる。


「……影山って、案外初心なんだね。かわいい」


 からかうような声が、耳元で響いた。


「う、うるさい。早くしろ」

「はいはい。……じゃあ、見ていいよ」


 恐る恐る振り返った俺の目に飛び込んできたのは、見違えるような有栖川の姿だった。


 白を基調としたフード付きの外套。その下には金の装飾が施された胸元が覗く、丈の短い上着。腰には細いベルト、脚には黒のニーハイブーツと、透ける素材のストッキング。腰の左側には、明智からもらった刀が下がっていた。


 気品と実用性が同居した、まさに剣聖と呼ぶに相応しい装いだった。


「……どう?」


 有栖川が上目遣いで聞いてきた。耳が少し赤い。


「似合ってる」

「そ、そう」


 有栖川は顔を背けたが、口元が緩んでいるのが見えた。


「ちなみに本当はパンツにしようと思ってたんだけど」

「……なら、なんでスカートにしたんだ」

「影山がスカート派って言ったんじゃん」


 さらっと言ってのける有栖川に、俺の体温が上昇する。


 ……くそっ、可愛いと思っちまったじゃねぇか。


 試着室を出て、俺は「いくらだ」と店員に声をかけた。


「外套込みで金貨4枚になります」


 高っ!


「かわいい彼女のためだもん。安いわよね?」

「……わかったよ」


 財布が、みるみる軽くなっていった。


 店を出ると、有栖川は嬉しそうに買ったばかりの服の裾を翻した。白の外套が風にたなびき、短いスカートから覗く脚が夕日に映える。道行く人々の視線が彼女に集まるが、本人はまったく気にしていない。


「ねえ影山、今夜どこに泊まるの?」


 さらっと聞いてくる。


「俺の宿だ。お前も同じ部屋になるけど、いいだろ? もう金ないし」

「……同じ部屋?」


 有栖川の目が、じわじわと輝き始めた。


「そ、そうよね。恋人なんだから、同じ部屋が当然よね。うん、当然よ」


 なぜか一人で納得し始めている。その目がキラキラしすぎていて、嫌な予感しかしない。


「……お前、変なこと考えていないよな?」

「考えてないわよ」


 即答が、逆に怪しかった。


 宿に着くと、有栖川は部屋を見渡した。


 その視線が、部屋の中央に鎮座する一台の家具で止まる。


「ベッド、一つしかないじゃない」

「金がないからな。……ダブルだし、離れて寝れば問題ないだろ」

「……そ、そうね」


 有栖川はベッドの端に視線を落とし、それから弾かれたように俺を見た。


 じっと、射抜くような眼差しだ。


 笑顔でも怒っているわけでもない。ただじっと、何かを決めたような目だった。


 その眼差しに、俺は理由もなく背筋が冷えた。


 ……こいつ、今何を決意した?


 有栖川は無言のまま、迷いのない足取りでベッドへと向かった。

 シーツを引っ張り、枕を叩いて膨らませ、毛布を丁寧に折り返す。黙々と、しかし妙に手際よくベッドを整えていく。


 ……嫌な予感しかしない。

 沈黙が、無言の圧力となって部屋に満ちていく。


「お、おい。何をしてるんだ」

「見てわからない? ベッドを整えてるのよ」

「いや、それは見ればわかるけど、なんで急に……」

「恋人のベッドを整えるのは、彼女として当然でしょ」


 有栖川は振り返りもせずに答えた。その声が、やけに落ち着いている。さっきまでのウキウキした有栖川とは、明らかに別人だ。


 ベッドメイキングを終えると、有栖川は振り返ることなく、備え付けの湯浴み場へと吸い込まれるように消えた。


 乾いた音を立てて扉が閉まる。


 やがて、壁越しに微かな水音が聞こえ始めた。


 俺はたまらずテーブルの椅子に腰を下ろし、両手で顔を覆った。


 ……絶対に何かある。あの目は、何かを決意した目だ。


 逃げるか? いや、ここは俺が金を払って借りている部屋だ。なぜ俺が逃げなければならない。落ち着け、落ち着け影山玄兎。相手はただの女の子だ。何も起きない。何も起きるはずがない。


 しばらくして、湯浴み場の扉が開いた。


 湯上がりの有栖川が、そこに立っていた。


 濡れた金髪が肩に張り付き、湯気でほんのり上気した白い肌が艶めかしく輝いている。そして身に纏っているのは、服屋でいつの間にか買い込んでいたネグリジェ。薄い生地が体の輪郭を余すところなく主張し、深く開いた胸元からは、豊満なバストが顔を覗かせている。


「……お、お前、いつの間にそんなものを」


 喉の奥が引き攣り、声が裏返った。


「影山が財布出してる間に」


 さらりと、罪悪感の欠片もない口調で言ってのける。


 有栖川はゆっくりと俺に近づいてくる。足取りが、どことなくふらついている。頬が不自然なほど赤い。湯上がりのせいだけではない。


「ちょ、ちょっと待て。その格好でこっちに来るな」

「どうして」

「どうしてって、お前……!」


 続く言葉が出てこない。ネグリジェの隙間から漂う石鹸の香りと、彼女が発する濃密な熱気が、正常な思考をかき乱していく。


「影山」


 有栖川が俺の目の前で立ち止まった。間近で見ると、その目が微妙にとろんとしている。見下ろす角度になった俺の視線が、自然と胸元に吸い寄せられそうになる。


 ……見るな、俺。

 見るんじゃない!


「あたし、覚悟決めたから」

「何の覚悟だよ!」

「恋人になったんだから、恋人らしいことをしようと思って」

「恋人らしいことってなんだよ! おい、待て! 早まるな! 俺たちまだ付き合って一日も経ってないいんだぞ!」

「関係ない」

「大いに関係ある!」


 俺は後ずさったが、有栖川はじりじりとその差を詰めてくる。彼女が一歩踏み出すたびに、薄い生地がふわりと揺れ、その下の柔らかな曲線が強調された。


「待て待て待て。お前、宗教の戒律はどうした!」

「それは結婚するから問題ないって言ったでしょ!」

「問題しかねぇんだよっ、俺の中では!」

「【光劫清森幸福論】の教義では、覚悟を決めた恋人との同衾は、魂の結合として――」

「都合のいい時だけその怪しい宗教を持ち出すんじゃねぇよ!」


 俺の背中が壁に当たった。完全に退路を塞がれた。


 有栖川は逃がさないと言わんばかりに、俺の両脇の壁に両手を突いた。いわゆる壁ドンだ。前傾姿勢になったことで、彼女の胸元がさらに大きく開き、視界を独占する。男としてこれを意識するなというのは、もはや拷問に等しかった。


 ……落ち着け。落ち着くんだ、俺!


「お前、正気か! 落ち着け、有栖川! よく考えろ! 俺たちはまだ――」

「……えへ」


 力無く漏れた笑い声に、俺の思考が停止した。


 間近で見る有栖川の目は完全に据わっており、頬は真っ赤。吐息がかすかに甘い酒の匂いを帯びていた。


 ……ん?


 俺は咄嗟に部屋の隅へと視線を走らせた。テーブルの脚元に、いつの間にか空になった酒瓶が転がっていた。


 ……こいつ、いつの間に飲んでたんだ。


「有栖川、お前酔ってるだろ」

「酔ってない……ちょっと、飲んだだけ……」

「ちょっとじゃないだろ! 空っぽじゃないか!」

「へーきへーき……影山のこと、ずっと好きだったんだから……これくらい……」


 ぽろりと、本音が漏れた。


 俺は一瞬、動きを止めた。


「ずっと、好きだった……?」

「……っ、言ってない」

「言った」

「言ってない! あんたの聞き間違い! 幻聴!」


 耳まで真っ赤に染めた有栖川が、気恥ずかしさを誤魔化すように再び距離を詰めてくる。薄いネグリジェ越しに、その体温がじかに伝わってくるほどの距離だ。


「とにかく! 覚悟は決まってるから! あたし、あんたに捧げるから!」

「俺は決まってない!」

「えっち目的で人のこと買っといて、そんな言い訳通用すると思ってんの!」

「だから、ちげぇって言ってるだろ!」


 俺は素早く腰のポーションケースに手を伸ばした。指先が触れたのは、小さなガラス瓶。高純度を誇る【眠りポーション】だ。


「悪いな、有栖川」


 俺は有栖川の唇の隙間に、迷わず小瓶の中身を流し込んだ。


「……ん? なに、これ……甘い……」


 数秒後、有栖川の全身からすとんと力が抜け落ちた。支えを失った彼女の体を受け止め、そのままベッドへと横たえる。彼女はすぐに穏やかな寝息を立て始めた。無防備な胸元が、規則正しいリズムで上下している。


 俺は強引に視線を外し、椅子に腰を下ろした。


『ずっと、好きだったんだから』


 先ほどの、震えるような告白が頭の中で何度もリフレインする。


 ……事故物件のくせに、なんでそんなことを言うんだよ。


 俺は天井を仰ぎ、長い息をついた。

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