たくさんのレビューがついていて、それも納得の優しくて素敵なお話でした。この物語のすごいところ(のひとつ)は、幅広い世代に響くところではないでしょうか。変化を迎える学生さんや若い方なら当事者目線として、もう少し上の世代なら昔を懐かしむように、子や孫を持つ方なら保護者目線として、そんな風に誰もがこのお話に共感できると思います。
これを支えているのは、どこまでも丁寧に掘り下げた等身大の目線だと思います。例として冒頭の一文を引用させて頂きます。
――冬は水溜りに氷が張ったら、夕方になっても全部は溶けない――
小学生の何気ない言葉で、ここがどういう場所か完璧に説明しています。なんなら不安を滲ませた心まで映している。なのにすごくさらっとしてるんですよね。まったく引っ掛かりなく話に入り込めてしまう。そんな素敵な表現がたっっくさんあります。凝った言葉だけが表現ではないことを教えて頂きました。
それと私の推しポイントとしてもう一つどうしても言いたいのが、ダンさんの喋り方です。あのツンとした誇り高さがどこぞの王女様っぽくてすごく好きです。もしかしてみやこ先生って……なんて想像も膨らんで愉しかったです。心温まるひと時をありがとうございました。
晴希は、三年生になりたくない。
大好きなみやこ先生と離れたくないからだ。
春休みが終われば、もう新学期。
その日は、すぐそこまで迫っている。
晴希は、たくさん質問をする子で、一人でダンゴムシを集めて過ごすのが好き。
皆より行動がゆっくりだったり、上手くできないことがあったりして、同級生から「どんくさい」と言われてしまうこともある。
そんな晴希に、みやこ先生はいつも笑顔で答えて、「大丈夫」と言ってくれた。
けれど、そのみやこ先生はこの春、学校からいなくなる。
近くでそっと寄り添ってくれるおじいちゃん。
晴希に話しかけ、話を聞いてくれるダンゴムシ。
晴希の「グラタンが好き」という言葉を受けて、おばあちゃんがシチューをアレンジして作ってくれたドリア。
遅れて咲いた、ニワザクラ。
ある一日の、ほんの少しの時間の中で、いろいろなものが晴希に「違ってもいい」「今のままでも大丈夫」と教えてくれる優しい物語です。
ぜひご一読ください。
最後に一輪だけ遅れて咲いたニワザクラ。
ダンゴムシとのやり取りを読んだあとであの花が出てくるので、メッセージ性が非常に強く、晴希くんが聞いている独特の世界観に没入できて、じんわり来ました。
晴希くんの不安が、ただ「三年生になりたくない」――というあまり幼稚なものではなくて、大人でも納得できる、みやこ先生との別れや、自分はどんくさいんじゃないかという怖さにきちんと結びついているのが好印象です。
春の夕方の、まだ少し明るいのに急に心細くなる感じもとても自然で、子どもの気持ちに寄り添っているなと思います。
最後にじいちゃんのところへ戻って、「――」と言える終わり方も好きでした。
そのまま少しだけ大きくなれる感じがすてきな、とにかく余韻の残る作品でした。お子さんにもそのまま楽しんでもらいたい作品ですね。