本作は冒険者に憧れた主人公『小生』──の視点から紡がれる、『冒険者ギルドって実際必要ないよね?』という不要論に、作者様の静かに燃やしていくような筆致が、丁寧に反証し最後には温まる物語である。
前提として、ファンタジーにおける冒険者ギルドとは、古くから愛用される便利システムである。ランク、依頼、仲間、ギルドから連想される単語をざっくり並べて見ても、ドラマが浮かび上がる程度には異世界ファンタジーを華やかに飾りつける概念だ。
しかしながらその利便性が裏目にでてしまい、その制度や仕組み自体が疑問視されることは、昨今の異世界ファンタジーには尽きない話題だろう。
私自身、ファンタジーに疎い側の人間であり、物書きを嗜み始めたばかりの新参だが、冒険者ギルドに代替しうる組織や制度に言及しない他作品に出会い感じたことは一度や二度ではない。
一部に理がない、とは言い切れない。そういう作品も楽しく読ませてもらっている。だが登場人物に情を乗せてしまうほど、それがノイズになってしまうのは私だけではないだろう。作品を魅力ある物にしようとすれば、それ相応の骨格を築かなければならない。
安易に冒険者ギルドの設定を使い、その組織が社会的に必然性を担保できなければ、作品の魅力は半減してしまうだろう。不要論が出てしまうのも、こうした作品が悪いというよりは、良くなって欲しいというある種の悲鳴とも受け取れる。とはいえノイズへの耳心地は十人十色だ。不要論に対抗する作品はあるのだろうか──。
そんな折に、不要論に反証していたのがこの本作である。
まずは作品全体を貫く独特の静けさが本作の世界観の魅力と言ってもいい。拙者は膝を打つ感動を抱いた。(抱くか打つかどっちかにせいと思う方はぜひ本作を読もう。言いたいことが分かるはずだ)
なぜ冒険者ギルドが必要だったのか。それを登場人物達の言動、そして情景から必要性を立ち上がらせ、一定の熱量を保ちながら読者諸兄を必然へと連れて行ってくれる。
だが安心して欲しい。その手は引き摺るわけでもなければ、無理強いを強いるものではない。
先にも述べたが皆様が抱くであろう最初の感情は『静けさ』である。静熱と言ってもいい。
消え入りそうな、しかし灯り続ける篝火だ。
本作の冒頭は役割を終えた者達の残火から始まる。残された者達が最後に受けるクエストの結末は、終焉か、それともまた違う道の果てなのか。
タイトル【最後の冒険者】──この言葉の意味は作品を読み終えたあと、意味合いを変えていくだろう。
作者様が手向ける冒険者達への答えを、ぜひお手に取って確かめていただきたい。