配信準備 : スカッとしたくねえ?
第43話 おれの話し聞いてる?
剣を持つと男性に、杖を持つと女性になる呪い。
アノバにかけられた呪いは、どうやらそんなものらしい。
「おれはここから海を越えたところにある村の出身なんだけどさ。そこじゃ何年かに一度、勇者が生まれるって言われてて、おれが生まれたのがちょうどその年だったんだ」
「ほんとだ。剣を持ったら男性になったよ」
「声も変わるんだな、喉仏がないんだからそれもそうか。体格も変わるけど、背丈は変わんねえんだな。んで、杖を持つと」
「『わたし』はとても大事に育てられました。幼いころからキミは勇者になると言われ続け、村の人全員でわたしを可愛がってくれたのです」
「ほんとに一瞬で変わるんだな。この瞬間とか、カメラのスーパースローとかで見られないのかね」
「会話が続くってことは、中身まで別人になるってわけでもなさそうだね」
「幼いころから勇者となることが決まっていたからでしょうし、もともとの素質もあったのでしょう。わたしはいわゆる神童と言われるほど賢い少年でした。ええ。最初は少年だったのです。それはそれは可愛い少年でした。今はかっこいいですが」
「杖を持ったまま剣を持つとどうなるんだろう? ケレンミ、ちょっと剣を持たせてみてよ」
「ほー、男性になったな。ということは今持ってるものではなく、最後にもったので更新されるのか」
「勇者になるには試練を受ける必要がある。それは村の奥にあるダンジョンで行われて、十歳になるまでは立ち入り禁止とされてる場所だ。そのダンジョンを踏破し、奥にある宝箱を開けることで初めて勇者として認められる」
「そのまま剣を離すと」
「やっぱ女性になったな」
「神童だったわたしは、将来勇者になると思っていましたし村の人もそう確信しているようでした。なにせ、十歳になる前から才能に満ち溢れていたんです。誰一人疑う人はいませんでしたし、まだ十歳になる前から勇者誕生セレモニーの準備が進められておりました」
「じゃあ次の実験だな。一回剣をもって、そのまま杖を持って……グタロウ、お前の剣を持たせてみてくれ」
「……あれ? 女性のままだね。持つ度に更新ってわけじゃないんだ。最初に剣を持ってたら、そのまま持ってる判定になるんだね」
「そしてある日、わたしは思ったのです。十歳になる前に、その試練を受けてしまおうと。みなさん、勇者になる日を心待ちにしておりました。だったら、早く試練を突破してしまえばいいのではないかと。十歳になるのを待つまでもない、はやく勇者になってしまえば誰でもが幸せになれると思ったのです」
「同時に掴んだらどうなるのかな?」
「多分あとのほうになると思うが……やっぱそうだな。コンマの狂いなく触ったらどうなるか実験したいが、それは難しそうだな」
「それで、八歳くらいのとき、おれはこっそり家を抜け出して…………なあ、おれの話し聞いてる?」
「聞いてる聞いてる。んで、なんだっけ?」
男性の姿になったアノバはジッと二人を見ていたが、やがて諦めたように息を吐いた。
場所を移し、グタロウの拠点である。
あそこで立ち話もできたのだが、長い話しになりそうだったのでグタロウが誘ったのだ。ここならお茶も出せるし、すこしなら果実といった甘いものも出せる。
「十歳になる前に試験を受けようとダンジョンに潜り込んだおれは、そのまま一番奥まで進んじまった。怖いもの知らずってこともあったんだろうな、今思い出すと、結構無茶なことも平気でやったと思うよ。寝てる魔物の横を、大して息を殺さず通り抜けたりな。んで、一番奥で、宝箱を見つけた。これが勇者になるために必要なもんなのかって開けたら、それが呪いだったってわけだ」
「……それはなんか不憫な話しだね」
グタロウが言う。
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