第7話 狂犬の遠吠え

 ある日、ギルドに難易度の高い依頼が舞い込む。

 北の峠を占拠した「首狩り族(デカピテーター)」の掃討。

 知能が高く、残酷な罠を仕掛ける亜人の集団だ。

「俺たちで行こう」

 カイルが言った。その目は、かつての正義感に燃える冒険者のものではなく、ただ「仕事をこなす」だけの冷淡なものだった。

「アルトお前が先陣だ。どんな罠があっても止まるな。お前が道を作れ。俺たちはその後ろを行く」

「わかった。任せて」

 アルトは喜んでいた。カイルが自分を頼ってくれている(と彼は解釈した)。

 だが、リアはカイルの横顔を見て、恐怖に身を震わせた。

(カイルは、もうアルトを『人間』として見ていない……。ただの『壊れない盾』だと思ってる)

 そして、その様子を影から見ていたルカが、こっそりと彼らの後を追い始めた。

「僕も……アルトさんの役に立ちたい。僕がアルトさんの背中を守れば、きっと認めてもらえる」

 誰もが狂い始めていた。

 痛みを感じない少年の周りには、正常な感情を持つ人間はいられなくなっていく。

 峠の向こうで待ち構えるのは、血を流しても止まらない少年と、血を流すことを強要する仲間たち、そして「痛み」を履き違えた少年の三つ巴の悲劇だった。

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