準備

安全性、世界構築、〈遺業〉、〈輝礎〉、仕上げ、以上の5つの手順で準備は進みます。


手順1:安全性

このゲームは、時として感情的ないしは個人的なものに深く踏み込むことがありえます。プレイヤー全員で、パンデミックや性的虐待、妊娠などといった「避けるべき話題」があるかどうか、率直に話し合ってください。その上で安全ツール(欄外記事を参照)の使用を検討してみてください。



欄外記事

不可避の主題

このゲームには、決して取り除けない主題が2つあります。1つは「自らの存在意義が根底から瓦解する脅威」で、もう1つは「肉体や精神に苦痛を抱えながらの老化」です。

安全ツール

安全な環境を作るというのは、「不快な話題を完全に避ける」ということではありません。そうではなく、プレイヤーがゲームを「続けてよい時」「一時停止すべき時」あるいは「起きたことを書き換えるべき時」を判断できるよう、準備を整えることなのです。これによって、プレイヤーは「必要なら巻き戻せる」と確信した上で、デリケートな話題に対しても前向きに取り組めるようになります。

ゲーム内での安全性を保つため、「一線と幕/Lines and Veils」や「筋書きの書き換え/Script Change」をゲームに干渉しすぎないツールとしてお勧めします。こういった安全ツールの詳細については、ttrpgsafetytoolkit.comを参照してください。



手順2:世界構築

安寧のための対話を終えたら、次は【先駆者】とその世界に関する真実を定めます。以下の設問に、プレイヤー全員で答えてください。もし例示された中に惹かれるものがあれば、それを選んで詳細を少しひねって独自の要素を加えてみてください。


1:【先駆者】はどのような世界に身を置いていますか?

例:「終末後のディストピア」、「現代の東南アジアの都市」、「凍てつく北極圏前哨基地」、「新世界と旧世界を繋ぐ賑やかな港」、「密儀に縛られた砂漠の王国」、「沼地の魔女たちの閉鎖的な共同体」、「質素な海辺の村」、あるいは……。

まずは、ジャンルと時代設定を考えてみるといいでしょう。


2:世界を蝕む、主たる災厄は何ですか?

例:「不治の病」、「市民の分断」、「夜に顕現する凄まじい恐怖」、「階級格差と怨恨」、「百尾の巨竜」、「干ばつと飢饉」、「石灰化する心臓」、「過去の亡霊」、あるいは……。

その災厄の正体はどういったものなのか、社会的、技術的、政治的、軍事的、環境的、生物学的、超自然的、あるいはその他の性質のものなのか、検討してください。


3:【先駆者】の出自は、その役割は何ですか?

例:「治療法を探す科学者」、「都会の多忙な会社員」、「夜の脅威を退ける警備員」、「労働貴族階級の御曹司」、「家族のためにすべてを捧げる怪物狩人」、「天賦の才を持つ水脈探し」、「月明りの下で踊るジャズ・ベーシスト」、「夢見心地な霊媒師」、あるいは……。


定まった回答を、紙やオンライン・ドキュメントに書き留めてください。



プレイの例

ミラは『遺燼抄』を1人で遊ぶことにしました。紙、筆記用具、サイコロ、トランプといった、物語を紡ぐために必要なものは用意済みです。

まず、【先駆者】の世界の細部を描き出しました。舞台は東南アジアの魔法の森。ティクバラン、カプレ、マナナンガルといった幻想生物が生息しています。この世界を蝕む主要な災厄は2つあります。1つは、夜な夜な故郷を襲う狂乱の怪物です。もう1つは、人間の浸食とそれによる近代化の到来です。彼女は【先駆者】をティクバランの「アーミン」とし、恐ろしい夜の怪物を退けるための偵察員として活動している、としました。



手順3:〈遺業〉

次に、プレイヤーは〈遺業〉を定めます。〈遺業〉とは、【先駆者】が構築した世界に遺したいと切望する証です。それは【先駆者】が一生を捧げるに値する功績でなければなりません。それは【先駆者】を夜も眠らせず、世界にとって本当に意味のあることを成し遂げたのか自問させるものでなければなりません。それは常に【先駆者】が切望する「志」でなければなりません。

〈遺業〉を定めるために、プレイヤーは順番に、「【先駆者】が子供の頃からずっとやりたかったと思うこと」を発表してください。各プレイヤーは【先駆者】の視点に立ち、「子供の頃、私はずっと〇〇になりたかった」と述べてください。

全員が【先駆者】の幼少期の望みを発表したら、大人となった【先駆者】が人生を賭した「一つの包括的な願い」へと、それらすべてをどう昇華させたのかを話し合ってください。〈遺業〉は、「友人や仲間たち全員に愛されながら死ぬ」という幅広く解釈できるものから、「絶滅危惧種をたった1人であって救い出すために、アマゾンの密林に赴く」といった具体的なものでも構いません。

みんなで決めた回答を大きめの紙片、あるいはオンライン・ドキュメントに書き留めてください。その下に丸を8つ描きます。この丸は、達成された〈遺業〉の証を刻むためのものです。



欄外記事

一人称で語る

このゲームにおいて設問に答えるときは、常に【先駆者】その人の視点から一人称で話してください。

〈遺業〉の例

• 自尊心を培い、両親の愛に値する人間になる

• 師匠の命を奪った犯人に復讐する

• 香辛料戦争に勝利し、父が遺した足跡を塗り替える

• 革命の歌を書く

• サファイアのオベリスクに秘められた真実を暴く



プレイの例

ティクバランの物語を続けるミラは、アーミンの幼少期の願望に根ざした、ふさわしい〈遺業〉を模索します。

彼女は「子供の頃から、アーミンは人間と友達になりたかった」とのだと想起しました。これに対応する〈遺業〉を考え着想を得て、「夜の怪物との戦いにおいて、魔法生物と人間を団結させる」と書き留めました。



手順4:〈輝礎〉

次に、プレイヤーは〈輝礎〉を定めます。〈輝礎〉は【先駆者】の能力や個性を形作るものです。これらはゲーム中、成功を確かなものとするために、否応なく犠牲に捧げられるでしょう。

ゲームには以下の3種類の〈輝礎〉があります。

・〈資源〉は、有形であれ無形であれ有限な資産や道具で、【先駆者】が人生の困難に対し、適切に対処する助けとなります。

例:安定した収入、魔力、世話役、素朴な家

・〈愛着〉は、有形であれ無形であれ有限な幸福の源で、【先駆者】に精神的な充足と満足を与えてくれます。

例:恋人、愛用のサックス、支持してくれるコミュニティ、決して去らなかった友人

・〈信条〉は、【先駆者】の内なる価値観を定義する、核となる美徳や信念です。

例:誠実、忍耐、勤勉、自立


プレイヤーは種類ごとに3つずつ、計9つの〈輝礎〉を作成します。構築した世界に基づいて独自の〈輝礎〉を作成してもいいですし、サイコロを振って無作為に決めても構いません(次のページを参照)。

決定した〈輝礎〉は、共有用紙やオンライン・ドキュメントに書き留めてください。


〈資源〉

1:遺産。誰かがあなたに、人生の助けとなる貴重な資産を遺してくれた。それは何か?

2:あなたの精神。特に優れている資質(例:楽観性、適応力、創造性)は何か?

3:強力な友人。あなたに恩義を感じ、いつもあなたを支えてくれる人がいる。それは誰か?

4:あなたの肉体。それはどう表れているのか? 美しさ? 強さ? 反射神経? 生まれ持った恩恵を決めよう。

5:安全。 あなたは、何らかの安住の地や、あるいは何らかのセーフティネットによって、危害から守られている。どのようにして守られているのか?

6:幸運。どういうわけか、運命はあなたに微笑んでいます。あなたの幸運はどう現れていますか?


〈愛着〉

1:支援事業。あなたは〈遺業〉とは別に、推進したり啓発したりしているプロジェクトを持っている。それは何か?

2:かけがえのない人間関係。ある人物からの信頼と敬意を糧に生きている。それは誰か?

3:賞賛。人々はあなたを仰ぎ見、尊敬している。それを勝ち得たのは何をなしたからなのか?

4:大切な過去との繋がり。ある貴重な物品や場所を通じて、あなたは常に過去と繋がっている。そこにまつわる思い出は何か?

5:支援の輪。あなたを気づかってくれる友人たちがいる。彼らはどういう集まりなのか?

6:大切な趣味。それはあなたに喜びと充足を与えてくれる。それは何故か?


〈信条〉

1:選択:「謙虚」か「忍耐」。それはあなたの振る舞いにどう現れているのか?

2:選択:「誠実」か「正義」。それはあなたの振る舞いにどう現れているのか?

3:選択:「親切」か「慈愛」。それはあなたの振る舞いにどう現れているのか?

4:選択:「忠誠」か「自立」。それはあなたの振る舞いにどう現れているのか?

5:選択:「不屈」か「勇気」。それはあなたの振る舞いにどう現れているのか?

6:選択:「気品」か「名誉」。それはあなたの振る舞いにどう現れているのか?



プレイの例

ミラは、アーミンが抱える9つの〈輝礎〉を作成します。彼女は表を使ってサイコロを振って、以下の結果を得ました。そして、それらを設定にあわせて肉付けしました。

〈資源〉

1.精神-問題解決能力

2.肉体-超人的な筋力

3.強力な友人-妖精女王の寵愛

〈愛着〉

1.趣味-夜に音楽を聴くこと

2.支援事業-森の偵察員の育成

3.人間関係-病に伏した母

〈信条〉

1.不屈-決して諦めない

2.親切-森に棲むあらゆる生き物に対して

3.気品-ティクバランとして



手順5:仕上げ

最後に【先駆者】に血を通わせ肉付けするために、プレイヤーはそれぞれ以下の質問から1つ選んで答えてください。すべての質問に答える必要はありません。

・あなたにとって誇りとなるものは何ですか?

・あなたは、周囲からどのように評されていますか?

・誰にも知られたくない、あなたの秘密は何ですか?

・夜眠れなくなるほどに心懸かりな原因は何ですか?

・あなたは、どこまで深く愛せますか?

最後に、【先駆者】に名前をつけてください。

これで準備は完了です。



欄外記事

小休止

もし、これまでの準備に45分以上かかったのであれば、一度10分ほどの休憩を取ってみるのもいいでしょう。

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