LOGS:艦隊整備計画2
─LOGS_DATA─
Time:西暦2209年9月10日
Recorder:キリアン・グラムス
Place:小惑星帯/ストーンマイナー駐屯地
─LOGS─
ルーカス少佐がイカロス改修の一時見送りを決定した翌日のことだった。
俺はデスクワークが落ち着いてきたことを利用して格納庫のイカロスを見に行った。というのも、イカロスのサポートAIであるLABの調整がまだ済んでいなかったからだ。やるならイカロスの改修が止まっている今がチャンスだと思った。
格納庫の入り口を通り抜けようとする。スライド式のドアが開き……そして俺は数人の整備員と鉢合わせになった。
「あ、あんたは……いや、キリアン中尉」
彼ら、いや彼女らは整備班の一員として作業している女性兵士達だった。彼女達は一瞬ハッと驚いた様子だったが、すぐに眉間にシワを寄せ険しい顔つきになる。中でも真ん中にいた兵士が一歩前に進み出ると、軽く咳払いしたあとこう尋ねてきた。
「中尉、少しお時間をもらえませんか」
——
「単刀直入に聞きます。今朝のイカロスの改修見送りをルーカス少佐に進言したのがキリアン中尉というのは事実ですか?」
アヤンダ・クマロ伍長。整備兵として数年以上働いているそれなりのベテラン兵士だ。俺も彼女には何度かお世話になったから顔は覚えている。
しかし……彼女だけでなく他の女子整備兵まで徒党を組んでとはな。とりあえず俺は正直に、しかし刺激しすぎない程度に話す。
「……まぁその、きっかけは作ったのは間違いないな」
「それでは理由をお聞きしたい」
「悪い。それは……言えないんだ」
「どういうことですか?」
おお怖。言葉の圧が目に見えて増したぞおい。
「正直あの発言は忘れてほしいと思っている。だがなぜか俺の言葉を聞いたルーカス少佐が——」
「つまり少佐が悪いと?」
「……」
「あのですね中尉。私達だって正当な理由があるなら何も言いませんでした。あなたの口から納得できる理由が聞けるなら文句はありませんでした……でもですよ?言えない?少佐が悪い?これはどういうことですか?」
……気がつけば取り巻きの女性整備兵も俺の周囲をぐるりと囲み、逃走経路は完全に断たれていた。
《対AI戦術:多重軸飽和攻撃》
《敵を包囲し、複数の異なる軸から同時に攻撃することで回避する余地を排除する》
《数的優位とチームワークを最大限有効化する戦術》
「ま、待て!待て!本当にこれは誤解というかその」
「俺からも、一つ聞きたいことがある」
突然話に割って入ってくるやつがいた。俺は振り向くとそこには一人の男性パイロットが立っていた。
「……トム・マクレガー中尉?」
終わった。俺はそう直感した。いつもの異常な勘とかじゃなくて、普通に理屈でそう分かってしまった。
アヤンダだけなら最悪中尉の階級を利用してやり込めることもできたかもしれない。
でもこいつは違った。
トム・マクレガー中尉。俺と同階級で、B班に所属する空間機動ユニットのパイロット。アヤンダがどれだけ取り巻きを連れてきても、伍長と中尉では対等な話し合いにするのは難しい。だがこいつにはその力がある。
こいつが話に絡んでくるのは、大変まずい。
トム中尉はアヤンダと同じか、それ以上に険しい顔をする。そして俺の前に歩み寄り囁くような声で尋ねてくる。
「……ま、あんたらしいと言えばあんたらしいか。流石だよ。人の仕事に水を差しておいて困ったら上官を盾にして逃げようっていうのか。見下げ果てた根性だな」
トム中尉はまるで獲物を吟味する猛獣みたいにゆっくりと俺の周囲を回りながら話し続ける。
「そうやってあんたは、ニコラからも逃げるんだな——」
……今、こいつはなんて言った?
「はっきり言ってやる……俺はお前が気に食わない。ニコラ1人守れなかった人間が、この基地を出て、いったいどこで何をしようっていうんだ?」
「……」
「新型機のパイロット?お前が……?午後にシミュレーター室に来い。お前にその度胸があるならな」
—META_DATA—
Logs:Mech Battler Crisis
Title:艦隊整備計画2
——
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