第27話 子供達、自己紹介をする
ミレアさんに促されるようにソファーに座ると、目をキラキラさせながら地面に座る子供達が、こちらを見てそわそわとしている。ミレアさんはどこまで子供達に話しているのか、それを軽く確認してみたところ、今日からみんなの先生が来るからね、とだけ言ってある。という返答が返ってきた。
つまり何の先生なのか、何のためなのかと言った情報は何も伝えていないということだ。
「じゃあまず軽く自己紹介ニャね。ウチの名前はリーリャ、えっと、リーリャ・フェリーベン。今は18歳で、国王陛下と王女殿下の依頼を受けてここに来たんだニャ」
「国王陛下のっ?!」
「すごいです!」
「どうしてきたかは後で説明するニャね。まずはみんなの自己紹介をお願いニャ」
自身についていろいろ聞きたそうにしている子供達の目線を受けて、一筋の汗が頬を伝うのを感じる。あたかも平常を保っているように見える表情ではあるが、先ほどから心臓の音が自らの耳に届いていて、今までこんなことはなかったのにと、焦りを覚える。
君たちを王女のために否応なく鍛える。君たちは将来王宮に行くことになる。私にそれが伝えられるだろうか。そして、3人の子供達をたった5年で王宮にいても問題がないレベルにまで鍛えることはできるだろうか。
リーリャはそれが不安で不安で仕方がない。聖女として修道院で子供達に教えたことはある。しかし、それもごく短期間であり、しかもすぐ側には教員としてシスターが付いていた。
できるできないじゃない。やるしかない。わかってる。それとこの不安は別だ。
子供達に聞こえないように小さく深呼吸をする。
すると、自己紹介って何を言えばいいかな、と話していた子供達がいろいろ固まったようで、元気よく手を挙げた。
「まず俺から!」
最初に手を挙げたのは髪を短く切って、至る所に絆創膏を貼っているいかにもやんちゃそうな女の子であった。
「俺はフィルマ。えっと、好きなのは魚釣りと、ウサギを捕ることだ!」
ふんっ、と鼻を鳴らして満足そうに頷くので、リーリャは小さく拍手をして次の子へ促した。
「はい。私はレネットです」
次に話し出したのは真ん中に座るフィルマのリーリャから見て左に座る女の子。金色の長髪と、きれいな白い服はフィルマと対照的で、貴族のお嬢様にこんな子がいたなぁと過去の記憶がよみがえってくるほどのビジュアルだ。
「好きなことはブランコで遊ぶことと、お料理です。よろしくお願いします」
「うん、いいニャね。ありがとうレネット。じゃあ最後」
そう一番右手側に座る女の子を見る。その子はずっとリーリャの目を見つめていながら前のめりになって座っていた。
「エルビアですっ、あの、先生はどこから来たんですかっ!」
「エル、今は自己紹介の時間だぞ~」
「あっ、あの、エルビアですっ!」
以上、といわんばかりに目を輝かせるエルビア、リーリャはこの手の少し天然っぽい子供をみると世話を焼きたくなってしまう。頻繁に孤児院に足を運んでいたためか子供達に甘いということを自覚してはいるが、特に子供達は話が通じないところがかわいいなと思っている。
「エルビア、ありがとニャ。ウチは王都から来たんだニャ」
「王都、とかいだっ」
「都会! 森あるのか?!」
「みんなは王都来たことあるニャか?」
「はいっはいっ、俺オストリアよく行くよ! オストリアよりでかいんでしょ?」
「王都いってみたいです、おしゃれなカフェテリア……」
「とかいっ、みなと~、さかなっ!」
「ニャはは~、たまらんっ!」
特に子供達は話が通じないところがかわいいなと思っている。
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