第24話 リーリャ、屋敷に到着する
「ピカピカニャね」
「そうね。新築だもの」
広く続く草原にぽつりと位置する湖の側には木が生えていて、森と言えるほど広い範囲ではないものの、林と言える程度の木々が集まっていた。その中に立つのが赤レンガで作られた左右対称の屋敷であった。
屋根は三角がたくさんついていて、その横にはエメラルドグリーンの湖が見られる。
正面には小さな庭のようなものが広がっていて、お茶会ができるようなスペースや、薬草を育てられるような小さな植物園と温室、近衛兵達が泊まれるような宿舎用の建物や、訓練スペースといった、かなり充実した設備が周辺に広がっている。
今回の旅のメンバーには使用人や近衛兵の他にも、薬師や学者といった専門職、研究職の人も同行している。使用人は屋敷の上層階に住むが、そうした研究職の人たちは近くの宿舎に泊まり、仕事場も一部別で整備されているらしい。
急ピッチでこれらの建物を作るのは大変だっただろう。それが一時的なものだというのだから、王宮の気合いの入れ方がわかる。
「ここにいるからといって、私が全く国政に関わらないというわけではないの。しっかりと叔母様の引き継ぎをしていかなければいけないし。東側諸領の領主達はわざわざ王都に行くより、せっかくならオストリアに来た方が楽でしょう。だからしばらくの間は領主達が王都に来てやっていた手続きとかが、一応私のところでできるようになるのだけれど、まあ大抵は王都へ行くでしょうね」
叔母様というのは、今の王姉殿下ということになる。王宮に戻ってすぐ、彼女は王妹として執務を行うわけで、引き継ぎは今から始めて行かなければ支障が出る。
やることはたくさんだ。
「屋敷自体は小さいけれど、敷地は広いのよ。せっかくだから近くの村を東側諸領の中心都市にできるくらい発展させてみようかな?」
「できるならやってみろニャ……」
「あはは~、そんな簡単にはいかないわね……。冗談よ」
扉を開けて屋敷の中に入るといきなりホールになっているというわけではなく、玄関用の一室があった。そこから扉をくぐると玄関ホールになっていて、そのホールにまたいくつか設置されている扉をくぐると、別の部屋へとそれぞれ続いていく。
その中の1つ、左手側に設置された扉を開くと細い道が出てきて、いくつかの扉を通り過ぎた先には2階へと続く階段が設置されていた。その細い道へと続く扉は、玄関から執務室や応接室に向かう際には使うことのない扉で、それは防犯上の観点からそのような設計になっているのだろう。
「私も屋敷はある程度関わったのだけれど、1階は仕事をする用、2階は生活用、3階は使用人のみんなのスペースっていう感じにしてあるわ。リーリャの執務室も一応用意はしてあるのだけれど、あまり使う機会はなさそうね」
「そうニャね。ウチはしないといけない書類仕事とかは特にニャいから」
「ひとまず2階へ行きましょう」
階段を上って二階へ向かう。2階に上がってすぐ私室が広がっているというわけではなく、また小さな部屋のようなところに着く。そこから扉を開くと大きな広間に出た。そこにはソファーや机、暖炉などが設置され、そして右手側には湖を見渡せるバルコニーが設置されていた。
バルコニーへ向かうためのガラス扉から湖を見ると、対岸に小屋のようなものがいくつか立っていて、フィリーはあの小屋も私たちの施設だと説明した。
「湖の側には関係者以外立ち入れないようになっているの。見張りも歩いていて、物々しい雰囲気ね」
「仕方ないニャよ。フィリーの安全が第一ニャから」
そのリビングルームにも幾つか扉が着いていて、そのひとつが食堂へとつながるもの。そしてもう1つをくぐると廊下が出てきた。廊下を進むとまたいくつか扉があって、このうちのひとつが3階へ続く階段になっているとのことで、トイレや浴室もそれぞれの扉をくぐるとアクセスできるとのことだ。
そして廊下を一番奥まで進んだその部屋が、私たちの部屋になっていた。
「リーリャが来てくれるかわからなかったから、2人用のサイズにする決断ができなくて……、一応大きめに作ったんだけど狭いかしら……」
その部屋は王宮の一人用の部屋より少し大きめのサイズではあるが、確かに2人で使うには少し狭いかもしれないと言ったサイズであった。しかし2人にとっては十分のサイズだった。
「うん、いい部屋ニャね。ありがとう、フィリー」
そうフィリーに微笑みかけると、彼女は目を細めて優しく微笑み返した。
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