北山大学自炊研究会シリーズ 1st Season
料理サークルとして始まったわけではない。
レシピを共有するための集まりでもない。
北山大学自炊研究会は、春野さつき、志摩澪、佐野晃の三人が、料理を作り、撮り、食べるところから始まった。
最初はただの自炊だった。けれど、同じ台所に立ち続けるうちに、料理は少しずつ三人の関係そのものになっていく。
洋食の春野さつきは、前に出る人。
誰かに届けたいという衝動で動き、料理の華やかさも、言葉の熱も引き受けていく。
けれどその奥では、何をもって届いたと言えるのかを、ずっと探している。
和食と出汁の志摩澪は、静かな人。
感情をそのまま出す代わりに、温度や手順や味の構造に変えて扱う。
料理は表現である前に、世界を整えるための形式でもある。
そして、主人公の佐野晃は、少し後ろに立つ人。
料理が特別好きだと言い切るわけではない。
それでも台所に立ち、カメラを持ち、三人で続いていく時間を見つめている。
物語は
『いただきますのプレリュード』 から始まり、
『いただきますのフーガ』、
『いただきますのコンチェルト』、
『いただきますのシンフォニー』、
そして 『いただきますのカデンツァ』 へと続く。
料理を作る。
食べる。
撮る。
続ける。
その繰り返しの中で、三人の距離は少しずつ変わっていく。
やがて声部は増え、関係は揺れ、台所の外側まで物語は広がっていく。
これは料理の話であると同時に、
同じ火の前に立つことでしか繋がれなかった人々の話。
そしてたぶん、
「いただきます」と言うその一瞬だけは、ずっと同じ方向を向いている。
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