第16話 義妹とコラボ配信な件 ②

「ほいっ。…………っとまぁ、こんな感じで爪と指の保湿をしてね。こうすることでマニキュアを塗るときのムラがなくなったり、簡単にはがれなくなるから。ここまでが下準備かな」


 同接数は2万人。先ほどからちらほらと見受けられる「今後の参考にします」的なコメントを見るに、俺の視聴者さん(女性)も見てくれているようでうれしい。


 それにしても、この企業の商品いいやつばっかりだな。化粧品だけじゃなくて、雑貨も作ってるっぽいから今度気に入るのないか探してみよう。木製の小物とかあるといいなぁ。


『手際いいなぁ』

『なんかこれ見ながらぼーっとしてんの意外に楽しい』

『作業用BGM』

『下準備だけでこれか…………』

『大変なんやなぁ』


「確かに大変だよな〜。俺も自分がやるか、と聞かれたら多分やんないし」

「ウタもずっとやってもらってるけど、一人でできるようになる気がしない」

「お前は少しずつ覚えてけ」


 詩の爪の下準備を終え、マニキュアの持ちを少し良くするためのベースコートなどの用意をしていると、詩が軽く伸びをしながらリスナーに向けて言う。


「完全に忘れてたけど、せっかくのコラボ配信なんだし、みんな兄さんに聞きたいことある?」


『彼女いますか!?』

『好きなタイプは!?』

『ウタちゃんの恥ずかしいエピソードください!!』

『趣味知りたいー!!』


 今までもなかなかの速さでコメント欄が動いていたが、詩が聞いた瞬間、すさまじいスピードでコメントが流れていく。


「おいおい一個ずつじゃないと俺答えれないぞ」

「うーん……じゃあ、ウタがいくつかピックアップするね。……どれにしよっかな〜……じゃあ兄さん、彼女はいますか?」


『絶対自分が聞きたかったやつ選んでて草』

『気になります!』

『返答次第では俺の許さないリストに入るぞ』


「彼女? いないしいたこともないよ」

「いっつもそう言うんだよな〜」


『意外』

『前も聞いたことあるの草』

『へぇ〜知らんかった』

『【朗報】リンは仲間! リンは仲間!』

『まったく信じてないwwww』


「じゃあ、次の質問ね。彼女ができたら、一緒に行きたいデートスポットはどこですか!?」


『エアコメ』

『エアコメ』

『エアコメ』

『エアコメ』


「詩? なんかコメント欄のみんなが同じことばっかり言ってるんだけど」

「大丈夫大丈夫。ただの悪ノリだから兄さんは気にしなくていいよ」


『こいつ……隠蔽を!?』

『しれっと隠そうとしてて草』

『エアコメの意味を知らないリンくん可愛い』

『ナチュラルにエアコメで笑ったwww』


「ほらほら、兄さん早く答えて」


 詩にそう急かされ、俺は準備していた手を止めて少し考える。彼女ができたらしたいことか……。


「うーん……家でゆっくり映画とか見たいかも。ルームシアターにして、のんびり映画見て、お腹すいたらデリバリー頼んで、一緒にご飯食べる生活とかしてみたいな」

「なんだ、ウタといつも一緒にしてることだね!」

「妹と彼女は違うだろ」

「なっ……!? そんなバカな……」


『ショック受けてて草』

『あまりにもピュア』

『兄さんピュアピュア過ぎ』

『でもいいよね、そういう生活』

『みんなスルーしてるけどいっつもウタちゃんとそんな生活してる兄さん羨ましすぎ』


「くっ……じゃあ次の質問! 彼女に対して一番求めるものは!?」


 何故か徐々に必死さを増してく詩に俺は少々気圧される。


「求めるもの? ……むずいな…………笑顔が綺麗で人生楽しんでる人? あ、後、他人に対してリスペクトを持ってる人かな」

「無難すぎ。面白くない」


『そーだそーだ!』

『いいぞもっと言え!』

『可愛い人って言え!』

『ウタちゃんって言え!』


「なんで俺こんな総バッシング食らってんの?」


 ぶーぶーと口をとがらせる詩や、それに呼応するようなコメント欄に思わずそう口から言葉が零れた。別に求めるものなんてそれくらいなのに。


「じゃあ、兄さんの理想の妹像を教えてください!!」


『エアコメ』

『紛うことなきエアコメ』

『さすがにエアコメが過ぎる』

『あまりにもエアコメ』

『言葉が出ないくらいエアコメ』


「ほんとにそんなコメントあんのか? ……まぁいいけど、なんだろうなぁ。…………うまく思いつかないから、理想の妹像とかじゃなくて、こう育ってってほしい、みたいなのでもいい?」

「えぇ……まぁいいけど」


『視点があまりにも親すぎる』

『親でしかないwwww』

『ウタちゃん不満そうwwww』

『兄さんエアコメの存在に気づき始めてて草』


「やってみたい、って思ったことに真っ直ぐ挑戦できるようにしてあげたい。金銭面とか、環境面で詩に不便が振りかからないようにしてあげたいなぁ」

「詩に求めることじゃなくて兄さんの抱負じゃん! ……嬉しいからいいけど」


 ぷくーっと頬を膨らませていた詩だったが、満更でもないのかこっちに頭を預けてきた。


 そんな詩の頭をワシワシと撫でてやる。


「おーよしよし! 詩は可愛いなぁ!」

「ふへへ〜……もっと撫でて〜♡」


『急にイチャつき始めたんだけどwwww』

『どうやったら質問コーナーからイチャつきにシフトできるんだよwwwww』

『PR配信はどこいった』

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