自主企画へのご参加ありがとうございます。
拝読しました。
料理の味を通して、その人の生き方や積み重ねてきたものが見えてくる、という着想が面白かったです。
最初は大学生同士の何気ない食事の話として始まるのですが、町中華、母親の生姜焼き、行列のできる店、手作りのオムライスと、食べ物が出てくるたびに、少しずつ「味」の意味が変わっていくところが良かったです。
特に、小野田が料理に対してやたら真剣に反応するのが印象的でした。
ただ美味しい、まずいではなく、
「深い」「浅い」という感覚で料理を語る。
最初は少し不思議な言い方なのに、読み進めるうちに、それが単なる味覚の話ではないと分かってくる構成がうまいと思いました。
母親の料理に対する主人公の鈍さも良かったです。
毎日食べてきたものほど、案外その価値には気づきにくい。
当たり前に出てくるご飯の裏に、どれだけの時間や生活や愛情があったのか。
そのことにあとから気づく流れが、押しつけがましくなくてじんわり残りました。
オムライスの場面も、少し笑えるようでいて、かなり痛いですね。
見た目は綺麗。
練習もしている。
でも、そこに何かが足りない。
料理の失敗というより、自分の生き方の薄さを突きつけられるような場面になっていて、短編の中でしっかり転換点になっていたと思います。
全体として、少し不思議な設定を使いながら、描いているものはかなり身近でした。
ご飯を作ること。
誰かに食べてもらうこと。
作ってもらったものを、ちゃんと受け取ること。
そういう日常の中にある大事なものを、味覚という形で見せてくれる作品でした。
読み終えたあと、家のご飯を少し大事に思えるような、温かい余韻がありました。