第28話:この世界だけじゃない
「……くっ!」
重い。
速い。
「さっきより明らかに強くなってる!」
アカリが体勢を立て直しながら叫ぶ。
「適応してるのよ!」
セラもすぐに言う。
「さっきの連携、もう通じない!」
『クソボス確定』
「……分かってる」
ナイフを握る。
だが。
「――遅い」
――ドンッ!!
「がっ……!」
防ぎきれない。
吹き飛ばされる。
「ユウマ!!」
「……っ!」
立ち上がる。
だが――
違和感。
「……おい」
手を見る。
震えている。
「……使えない?」
『え?』
スキル欄。
【《運命改変(バグ)》:使用不可】
「……は?」
「ユウマ!?」
「スキルが……死んでる」
「そんな……!」
アカリの顔が青ざめる。
「さっきの反動……?」
「違う」
セラが即座に否定する。
「これは“外部干渉”」
「……は?」
その瞬間。
「――正解」
敵が、初めて“満足そうに”言う。
「この空間では」
一瞬の間。
「“それ”は使わせない」
「……っ!」
『能力封印!?!?』
「調整した」
淡々と続ける。
「異物は、排除する」
「……ふざけんな」
完全に、対策されている。
「つまり」
ナイフを握る。
「素の実力でやれってことか」
「そうだ」
敵が頷く。
「それが本来の姿だ」
「……上等だ」
踏み込む。
今度は――
スキルなし。
純粋な戦闘。
「――はあああ!!」
斬る。
だが――
「……遅い」
弾かれる。
「……っ!」
差が、デカい。
『普通にキツい』
その時。
――ピィィィン
「……っ!?」
頭に、ノイズ。
見えた。
一瞬だけ。
知らない景色。
崩れた街。
異形の空。
「……なんだ、今の」
「ユウマ!?」
「……いや」
首を振る。
だが――
残っている。
違和感。
「……おい」
目の前の敵を見る。
「お前」
一瞬の間。
「ここだけの存在じゃないな?」
「……」
敵が、初めて黙る。
『お?』
「答えろ」
「……観測権限外だ」
「は?」
「だが」
ゆっくりと言う。
「この世界は、閉じていない」
「……」
「外がある」
「そして」
一瞬の間。
「お前と同じ“異物”も、いる」
「……!」
『海外勢きた!?』
「管理者は複数いる」
「お前は、その一つに過ぎない」
「……なんだそれ」
スケールが、一気に跳ね上がる。
「……つまり」
セラが低く言う。
「ユウマみたいなのが、他にもいるってこと?」
「より正確には」
敵が言う。
「より完成された個体がいる」
「……」
嫌な汗が流れる。
「そいつらと戦ったら?」
アカリが小さく呟く。
「……勝てるの?」
沈黙。
「……今は無理だな」
正直に言う。
「だから」
ナイフを構える。
「今は、お前を倒す」
敵が、静かに構える。
「可能か?」
「やるしかねぇだろ」
スキルは使えない。
でも――
「全部なくても」
一歩、踏み出す。
「戦えないわけじゃない」
その瞬間。
再び激突した。
だが――
「……っ!」
押される。
完全に。
「……このままじゃ」
勝てない。
その時。
「ユウマ」
セラが静かに言う。
「一つ、方法がある」
「……なんだ」
「あなたのスキル」
一瞬の間。
「“完全に切り離す”」
「……は?」
『能力消失ルートきた!?』
「一時的に」
「存在ごとオフにする」
「……」
「そうすれば」
敵の干渉を、受けなくなる。
「……つまり」
「完全に“ただの人間”になる」
沈黙。
「その代わり」
セラが続ける。
「この戦闘中、二度と使えない」
「……」
リスクはデカい。
だが。
「……やるしかないな」
ナイフを握る。
「頼む」
セラが頷く。
「……覚悟して」
次の瞬間。
【《運命改変(バグ)》一時切断】
世界が、静かになった。
「……」
妙に、軽い。
そして――
「……なるほど」
敵が、初めて驚く。
「面白い選択だ」
「だろ?」
ナイフを構える。
「ここからは」
一歩、踏み出す。
「完全に実力勝負だ」
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