第55話 ボッカチョが「デカメロン」の中で言っているように、

君には、次のことしか言えない。ボッカチョが「デカメロン」の中で言っているように、「やった後で後悔するほうが、やらないことで後悔するより、ずっとましだ」という一句だ。


今日、君が享受している、恋することによって得られる喜びは、明日になれば、もう受けられないものなのだよ。それを受けている君は、私からすれば、イギリスの王よりもうらやましい。


「手紙」


マキアベリ氏には珍しい恋の話なので、取り上げてみた。要約すれば、「後悔しないために、恋の喜びを先延ばしにせず、今この瞬間を生きよ」で、マキアベリ氏は、恋をしている相手に対し、「未来の不確実さ」を前提に、「今日の喜びは今日しか味わえない」と強く訴えている。


「ボッカチョが『デカメロン』で言っているように」は、デカメロンの有名な人生訓、「やった後で後悔するほうが、やらないで後悔するよりましだ」から。これは中世イタリアの恋愛観・行動倫理を象徴する言葉で、「行動しないことこそ最大の損失」という思想から。マキアベリ氏は、この権威ある文学的引用を使って、自分の主張に普遍性を与えている。


「それを受けている君は、イギリスの王よりもうらやましい」は、ここは比喩の核心になる。「王の権力・富より、恋の喜びのほうが尊い」という価値転倒を示す。この誇張表現は、「恋の幸福は社会的地位を超える 」という恋愛文学の伝統的モチーフで、同時に、手紙の書き手の“羨望”が強く滲み、相手への深い愛情が読み取れる。


尚、マキアベリ氏とヘンリー8世は同時代の人である。マキアベリ氏:1469–1527、ヘンリー8世:在位1509–1547。

マキアヴェリが外交官として活動していた時期、ヘンリー8世はヨーロッパ政治の中心人物。

絶大な富(ヨーロッパ随一の財力)を持ち、強力な王権(絶対王政の先駆)があり、豪奢な宮廷文化、恋愛・結婚問題で有名(恋と権力の象徴)だった。


(参考)

ヘンリー8世は、6人の妻をめぐる離婚・処刑・宗教改革でも、有名な人物だった。

① 最初の妻キャサリンとの離婚問題に苦しんだ。(マキアベリ氏の手紙の時期に近い)

キャサリンとは兄の未亡人との再婚なので、教皇の特別許可で成立した。

しかし男子が生まれず、ヘンリーは不満を募らせ、さらに侍女アン・ブーリンに恋をする。

ヘンリーは「この結婚は無効だった」として離婚を求めるが、教皇が拒否し、 これが後の宗教改革の引き金になった。

② アン・ブーリンとの結婚と悲劇

教皇が離婚を認めないため、ヘンリーは自ら英国国教会を1534年に創設した。

ローマ教皇の権威から離脱し、自分を「教会の長」とした。

これは、 世界史レベルの大事件(イングランド宗教改革)である。

しかし、アン・ブーリンと結婚するも、男子が生まれない。

やがてヘンリーは彼女を疎み、「不倫・近親相姦・反逆」の罪で処刑した。(実際は冤罪らしい)

③ その後も結婚を繰り返す(合計6人)

ヘンリー8世の妻たちの運命は有名な一句でまとめらている。

「離婚・処刑・死亡・離婚・処刑・生存 」

キャサリン・オブ・アラゴン → 離婚、アン・ブーリン → 処刑、ジェーン・シーモア → 出産後に死亡、アン・オブ・クレーヴズ → 離婚、キャサリン・ハワード → 処刑、キャサリン・パー → 生存。



さて、マキアベリ氏の言葉に戻る。

「さっさと、告白して、恋と人生を楽しんだ方がいいよ」らしい。

もちろん、実態は不明なので、言い切れないのはご理解願いたい。


ヘンリー8世はともかく、恋愛に積極的なのは、イタリア人男性の特徴らしい。

なかなか、日本人男性が、真似できないことである。

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