第51話 敵の計略を見抜くことほど、指揮官にとって重要なことはない。
敵の計略を見抜くことほど、指揮官にとって重要なことはない。
だが、このことほど優れた資質を要求される能力もないのだから、この能力に恵まれた指揮官は、いかに賞賛されたとしても、され過ぎることはないのである。
そして、敵の行動を予知することよりも、敵の計略を見抜くことのほうが、容易である場合が多い。
何故なら、行動となると、遠くに離れていれば予知は不可能になるものだが、計略の予知は、離れているほうが、かえって有利になものだからである。
「政略論」
さて、最近の国会で、
「日本の弾薬数、置き場所を国民に公表せよ」
「仮想敵国が日本のどの地域を攻撃するのか、想定を公表せよ」との質問があった。
弾薬の数量・保管場所の公表や、仮想敵国がどの地域を攻撃するかの想定の公表は、いずれも日本の安全保障上きわめて重大なリスクを生むと考えられる。
これは、防衛省自身が「弾薬・司令部・装備の位置や能力は秘匿・欺瞞を行うべき」と明記していることからも裏付けられる。
1. 弾薬数・保管場所を公表するリスクとして、
① 攻撃目標の特定を容易にする
弾薬庫は「継戦能力の中枢」であり、破壊されれば自衛隊は戦闘継続が困難になる。
防衛省は、弾薬庫の地下化・再配置・欺瞞を進めており、位置情報は秘匿すべき対象と明記している。( 公表すれば、敵国にとって最優先攻撃目標のリストを提供するのと同じ)
② サイバー攻撃・破壊工作のリスク増大
位置が分かれば、サイバー攻撃や内部協力者による破壊工作の計画が容易になる。
特に弾薬庫は「爆発すれば甚大な被害」を生むため、テロの標的にもなり得る。
③ 住民不安の増大と政治的混乱
実際、弾薬庫の詳細を明かさないことに住民が反発した例があるが、防衛省は「能力を損なうため詳細は言えない」と説明している。
( 公表すれば、逆に「攻撃される可能性の高い地域」として社会不安を招く)
④ 同盟国との情報共有体制に悪影響
NATOを含む先進国では、弾薬庫の位置は高度な軍事機密。
日本だけが公表すれば、同盟国から「情報管理能力が低い」と評価され、共同作戦に支障が発生する。
2. 仮想敵国がどの地域を攻撃するかの“想定”を公表するリスク
① 敵に「日本の想定」を逆利用される。
想定を公表すると、敵は「日本がどこを重視し、どこを軽視しているか」 を把握できる。
軽視している地域を狙う、想定外の攻撃を行うなど、戦略的奇襲を受けやすくなる。
② 住民の不安・経済的混乱を招く
「この地域が攻撃される可能性が高い」と政府が公表すれば、 不動産価値の下落、 企業の撤退や
住民の流出といった社会的混乱が起こる。
③ 外交的緊張の激化
特定国を「仮想敵」と明示することは、外交上の重大なメッセージとなる。
防衛白書でも、特定国を名指しする際は慎重な表現が用いられている。
公表は、相手国の反発を招き、緊張を高める。
④ 抑止力の低下
抑止力とは「敵に不確実性を与えること」なので、攻撃想定を公表すると、敵は「日本の反応パターン」を読みやすくなり、結果として 抑止力が弱まり、危険が増す。
3. 防衛省が“秘匿・欺瞞”を重視する理由(根拠)
防衛白書の記述から読み取れるポイントとして、防衛省は、司令部の地下化、装備の隠蔽・欺瞞、施設の再配置・集約化 を進めており、これは「攻撃を受けても容易に能力を喪失しないため」と明記されている。
つまり、「位置情報・能力情報は秘匿すべき」 というのが日本政府の公式方針。
そのため、国会での「公表せよ」という要求は、日本国、国民の安全や、この方針と真っ向から矛盾するのである。
マキアベリ氏の視点に立てば、軍事機密の公表を求めるような発言は、国家の安全保障を危険にさらす行為として、極めて不適切と評価されるだろう。
彼の政治思想では、国家の防衛と国民の安全を守ることが最優先であり、それを損なう行為は「愚行」と見なされるからである。
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