運動能力に致命的な課題を抱えていますね
第14話
芽衣
勉強だけに構っている場合ではない。
愛花はダメ人間なのだから。
「来週から試合するから、心の準備をしておくように」
体育の時間、早めに授業を切り上げた体育教師がバスケットボールを小脇に抱えそう告げた。
「試合か〜まぁ私は芽衣と一緒だから大丈夫だよね」
「そんなことないぞー。誰かを特別扱いするとかないからな、恨みっこなしでチームプレイする事」
そんな話を割るように、教師の声がまた響く。
懐から片手で小さな袋を取り出して、カサカサと音を立てながら掲げた。
「よし、それじゃあ今日はとりあえず組み分けするぞー。くじを引いて書かれた番号の生徒でチームになって練習すること」
「うわっ、クジか」
「運次第ですね。出来れば私やご友人と一緒だといいのですが」
「そうだねぇ、フォローしたげたほうがいいもんねぇ」
後ろから愛花の肩を両手でぐっと掴んで、未来が顔を割りいれてきた。
「愛ちゃんバスケ苦手みたいだしねー。種ちゃんじゃなくても私たちのどっちかならフォローしてあげられるけど」
バスケ部の未来と麻里亜も2人で愛花を支えようとしてくれている。
愛花も「本当に!?」などと嬉しそうに表情に笑みを含ませる。
「ほら、早く引いてチームごとに分かれろー。来週頭からチームで軽く練習して試合するからー」
その言葉に合わせて教師の前にゾロゾロと列を作り始める。
憂鬱さを帯びるような並びの列に加わろうと立ち上がろうとすると、愛花も勢いよく立ち上がってこちらに手を差し伸べる。
「行こっ! 大丈夫だよ! 私たちは4人いるんだし、この中の誰かとは一緒になれるでしょ! 誰とでも心強いよ私は!」
ドンと胸を叩いてそう言う彼女は自信に溢れているようだった。
まぁその言葉を分解すると人任せにする……ということなのだけど。
愛花が緊張で怯えるなんていうことになるよりはよっぽどいいか。
私は彼女から差し伸べられた手を取って、その笑顔に応えた。
「そうですね」
「やったー! 私も?」
「出来ればみんな一緒がいいけどねぇ」
そうして私たちも列に加わって、クジを引く。
最後尾で私たち4人が固まり、それぞれチームに分かれて集まっていく。
5人×4つのチームなら、よっぽど運が悪くない限り誰かとは同じチームになれるはずだ。
この辺は葉矢川への計らいとか関係ないし、運次第。
4人いるしきっと誰かと一緒になれる。
私自身も愛花と同じように、誰かしらが愛花とは同じチームになるだろうと思っていた。
「はぁ……本当にお嬢様はお嬢様ですね」
そしてその思い込みは一瞬で泡沫と消えた。
悲しいかな。
「私たち3人は同じチームだけど……」
「愛花ちゃんは1人になっちゃったねぇ……」
それも私たちは最後尾、残ったチームの空きは3人と1人。
これでなぜ1人の方を引いてしまうのか。
愛花は一番最初に引いたから、その時点で当たりくじは3枚あったのに、見事に1枚の大凶を引いてみせた。
そんな彼女に麻里亜たち2人も流石に驚きを通り越して呆れ返っていた。
マジ!? と未来は声を出し、麻里亜はおぉ〜……と言葉に詰まった。
そろそろドジっ子じゃ済まない事を理解し始めたようだ。
「なんでこんなことに……芽衣ぃ……」
「クジ運までないとは流石に計算外でした」
ただ1人、あまり話したことがないであろうグループに取り残された彼女を、私たちは見守っていた。
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