一部を読み終えた勢いでレビューを書いています。
まず、まだ謎はたくさん残っているはずなのに、読み終えたあとの読後感が、とてもいい。
この作品の中心にあるのは、事件そのものでも、恋愛そのものでもなく、聞昭が過去の傷や喪失と向き合いながら、少しずつ人との関係を取り戻していくことなのだと思います。
「古物の声を聞く」というファンタジー要素は、その物語を描くための大きな軸になっていて、その中心には沈淵がいる。
聞昭と沈淵の関係には、途中から「これは……ラブコメの波動では?」と感じて、ちょっとソワソワしながら読んでいました(笑)。
でも、読み進めていくと、どうもラブコメとは違う。
互いを認め、互いに相手を救い、そして相手が自分の足で立てることを願う。
そんな二人の、ものすごく静かな純愛なのだと感じました。
第一部の謎はまだ残っています。
それなのに、聞昭自身の物語には、確かな一区切りがついている。
だからこそ、最後まで読み終えたときに、とても綺麗な余韻が残りました。
この先、聞昭が何を聞き、何を審らかにしていくのか。
そして、彼女と沈淵の関係がどこへ向かうのか。
第二部も楽しみにしています。
ようやく、第1部を、完読しました。
ですが、この小説のレビュー文を書く事は、非常に、難しいのです。
長大な中国の歴史を舞台にして書かれた物語であり、この小説を、上手に語るだけの、語彙力も筆力も無い、この私には、荷が重いのです。
極、簡単に言えば、中華風の衣を纏っての、ある種の「幻想的小説」の形を取って、読者に提示される物語だとしか、表現のしようが有りません。
それだけ、完成度が異常に高く、読者自体にも相当の読解力が要求されるのですから。
「小説家になろう」での『l薬屋のひとりごと』(日向夏:著)の大ヒットにより、似非宮廷物が、乱立し多数投稿されているこの時代、緻密な時代考証により、書かれたこの小説は、その中では、一線を画しています。
特に古物審理官と言う、古物の「最後の残響」が聞こえると言う主人公の設定は、オカルト的には、あながち、出鱈目でも無いのです。
事実、相手の持っていた、万年筆や持ち物に触れただけで、相手の特徴や性格等を言い当てる人物の話は、超能力関係の本では、良く出てきます。
怪奇とロマンの溢れる、この不可思議な小説を、先ずは、読んで見て下さい。
【レビューコンテスト応募】
古物の声を聞けたら、いかなる語りを聞くことでしょう。
自らは歩けず、人の手に掴まれるばかりで使われる物、それらは使われる者つまり使者として無下に扱われ、ひとたび語る機会を得たならば言いたい放題。私達は古物の声を聞けないがために気楽でいられます。
他人の声を聞けたら、いかなる語りを聞くことでしょう。
普段は饒舌なあの人の、押し殺すような語り。いつも無愛想で寡黙な彼の人の、命張り裂けんばかりの語り。私達は他人の声を聞かないがために気楽でいられます。
それでも。
お静かに。過去を語るべき時が訪れたようです。聞き漏らしてはなりません。
人は古物とは違います。語れる場所まで歩くことが出来ます。時には道を開くために剣を振るうことも。
禄や土地が欲しいのではありません。過去を偽りなく語る言葉を残すために。
悲痛な言葉に、耳を澄まし、刮目あれ。
古物の声を聞くことができる女性、昭文。
彼女は聞昭と名乗り、男装の古物審理官として働く。
そして司直として働く男、沈淵。
死んだはずの男にして別の人物として生きる昭文の元許嫁。
中華風異世界を舞台に、聞昭と沈淵が周りで起こる事件の影に隠れた真実を暴いていく。それはやがて沈淵が名を捨て、顔を変えて生きねばならなかった歴史の大きな闇へとつながっていくのです。
そうした壮大な物語と同時に描かれるのは、昭文と沈淵の恋の物語。かつての元許嫁を想い続ける昭文。そして昭文を想いながら、自らがその許嫁だと名乗り出ることができない沈淵。二人の焦れったい恋がとても尊いです。
作者様お得意の中華ファンタジーと恋物語、ぜひご一読ください!
一話ごとの完成度が非常に高く、毎回とても読み応えがあります。
作者様の文章力の高さがはっきりと感じられ、読むことそのものが、ひとつの美しい体験になっている作品だと思いました。情景描写には映像のような鮮やかさがあり、花の色や香り、光や音、場面ごとの空気までが丁寧に描かれています。五感を通して作品世界に触れているようで、物語の中へ自然に引き込まれました。
設定もとても新鮮です。大きな事件の中に小さな事件があり、その小さな事件がまた本筋へとつながっていく構成が見事で、物語全体が丁寧に組み立てられていると感じました。読み進めるほどに続きが気になり、他のレビューでも書かれていたように、中毒性のある作品だと思います。
また、感情描写も非常に繊細で深いです。聞昭と沈淵の関係性は、「尊い」や「切ない」という言葉だけでは表しきれません。近づきすぎない静かな距離感の中に、痛みや救い、祈りのようなものがあり、何度も胸を打たれました。
文章そのものにも深く考えさせられるところがあり、作者様が物語を通して、ずっと何かを問い続けていることが伝わってきます。
今夜、第一部が結末を迎えるとのことで、とても楽しみにしています。
この作品がいつか書籍化されることを、心から願っております。書籍として、ぜひ手元に置きたい作品です。
丁寧に読み進めながら「この作品のレビューを書いてみたい」と思う反面、これほど力のある作品に自分なんかが…とおこがましい気持ちになりながらも、けっきょく筆をとりたくなるのも、中華古風の世界から受けたエネルギーによるものでしょう。
静けさが漂う独特の世界観は、章をひらいた時からすぐに体感することができますが、本当に心を惹かれたのは、選び抜かれた言葉と、必要以上のことを語らない文章の制御による品性の高さでした。
たとえ作り込んでも人柄が出る小説にこそ魅力を感じる自身としては、これほど作者の方を文章の裏側に感じることができる時間に尊さをいだきました。
何度も読み返したくなる美しい文章に触れるたび、そのまま作者の方の繊細なお人柄を如実を感じ取れ、「もっと読みたい」という自然な感情が湧き起こりました。
物語の登場人物がわたくしに示してくれたのは、その気高さや立場以上に、時代や国境を超えた、人としての在り方のようなものだと感じました。
なにより登場人物へ歩み寄る作者の方の真摯な姿勢がふしぶしに見受けられ、たとえこの物語が映像作品になったとしても、真の魅力は丁寧に選び抜かれた言葉によって綴られたこの場所にこそあると感じずにはいられません。
事実、作者の方の感性の豊かさは「近況ノート」で見ることができますので、ぜひそちらもご覧になられるといいでしょう。
小説とは人が書き、描きだすもの。
たとえ中華古風の世界に慣れてない人でも、読み進めることで、登場人物を通した「在り方」に触れることができるでしょう。
もはやジャンルどうこうではなく、読み物が好きであれば、懐の深いこの物語にあたたかく迎え入れてもらえるはずです。