あの夜、嵐のドサクサに紛れて流された、「黒くて臭うもの」。
あれはいったい何だったのか。
人間の身勝手で残酷なエゴの塊が頭をよぎり、胸がキリキリと痛みました。
読者に冒頭から身を乗り出させ、「流されたもの」の正体が気になるあまり一気にストーリーへとのめり込ませる文の構成にとても魅力を感じました。
実体験をもとに書こうとすると、どうしても説明っぽくなりがちですが、本作では全くそれを感じさせない、静けさや不気味さの漂うフィクションになっていました。それにもかかわらず、リアルな人間の醜い部分を読者に考えさせる表現力、そして余韻の残る見事な筆致に脱帽しました。