第5話

 今日も上手く電話できなかった。チャイムが鳴っていて、聞こえづらかったのか、もしもし?って言われる声も嫌だったし、ぶつっと電話を切られたのも精神的にこたえた。 

「電話が上手くできないんだよね。なんか私って好かれてないから、皆電話かけてくれないのかな、とか落ち込むし。仕事がわかってないから、聞かれても困るって皆知っているのだとしたら、それはそれでいいんだけど」

 妹の繭子は今日も家に帰ってきている。アパートがあるのに、一人でいるのが寂しいようだ。一人だと話すことがなくて、自分の頭の中で考えがぐるぐるとしてしまうから誰かといたいのだ、と言っている。

「お姉ちゃんにはできることがあるんだからさ。苦手なことにそこまで落ち込むことないんじゃないの。できることに目を向けて自信もってたらいいの。なにごとも完璧にはいかないんだから」

 繭子は、刺繍をしながら言う。それでも私はなんでもそつなくこなす人間でありたいし、できないことがある自分でありたくない。

「うまくやりたいんだよね。私は結局。ちゃんとできる人でありたいし、そうじゃない自分を許容できないんだと思う。仕事では求められたら上手くできなきゃだめだと思うし」


 仕事をやめる子にラインを送ったけれど、それは私の自己満足でしかなかったかもしれない。相手のことは考えずに、自分が何か言葉を投げかけたいから、相手を付き合わせたようで、やめておけばよかったかな、と思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る