第4話

 久しぶりにラインをした子からの返信がない。もうブロックされてるのかな?私はラインを何度か確認してみる。何度見てもラインの通知はないままだ。無視されていることに傷つく。

 繭子に、

「ラインした子から返信がないんだけど。ひどくない?知らずのうちにブロックされてるか、もう連絡とることないと思って削除されてるのかな。こんなんなら送らなければよかった。送ったのが間違い。送ったことは勇気のある行動だって言ってくれる子もいたけど、納得がいかない」 

 と愚痴を言う。

「他人は思い通りにはいかないんだよ。それぞれ事情があるんだろうし。でも、ラインを返信しないのはその人の落ち度だよね。まぁ、お姉ちゃんが言ったことが悪かったって向こうは思っているかもしれないけど」

 繭子に言われて、そうかもな、と思う。確かに、私が送ったラインが気味悪かったのかもしれない。なにこの文面と思ったのかもしれない。だとしたら、余計送ったことを後悔する。

「でも、その子にラインを送って声をかけてあげようと気遣えることは、悪いことじゃないでしょ」

 繭子と話をしていると、ラインの返信を気にしていたことが大したことのないように思える。

「でも、もう送らないし、普段から会話をしていないのに、突然送るのはやっぱり変だったかも。母さんにいろいろと試してみるべきよって言われたけど、本当なのかな。失敗して傷つきたくないし、やっぱり行動しない方が吉なのかも」

 私はすっかり弱気になっていた。誰かと交われる喜びよりも、失敗して傷つく方が、私にとってはよっぽど怖い。

 

 毎日YouTubeを見るけれど、不思議なことに新しいものを見るようになると前まで気に入っていたはずの動画はもう見なくなって、それを少し後ろめたいと思うけれど、数年して、見返したりすることもあるから、そんなもんなのかもな、とも思う。


「耳が悪すぎて、仕事中にかかってきた電話で相手がなんと言っているのか聞き取れなくて困る。だけど、聞き返しずらくて、わかってるふりをしてしまうんだよね。なんとかしたい。素直に聞けなくて変にできる、わかるふりをしてうそをつくのなんでなのかな。他の人は素直にちゃんと言えているのに」

 私は小説を書きながら繭子に言う。妹は、音楽を聞きながらスマホを見ている。春休み中も大学の勉強があるみたいだが、基本的に自由に過ごしている。今日は車を運転して、友達とお寿司を食べにいっていた。友達が少なく、中高の同級生と卒業のときに関係を絶った彼女には、友達はあまりいない。私と同じだ。だけど、私とは違って友達がほとんどいないことを彼女はまったく気にしていない。

 繭子は電話のことを言う。

「まぁ、聞き取れなくても大きな支障がないならいいんじゃない?別にそのとき限りなんだしさ。本当に困ったらお姉ちゃんだってちゃんと聞き返すでしょ。そのとき聞き返さない判断をしていることにだって理由があるんだよ。そっちの方が、なにか利点があるとかさ」

 まぁ、そりゃそうだけど、と私は思う。それでも、私はちゃんと受けごたえできてないと思うし、周りにだってそう思われてるに違いない。そう思うと、自分が嫌になる。

「ちゃんと聞き返すように変わらなきゃとは思うんだけど、つい同じことを繰り返してしまいがち。そっちの方が楽だからかな。でも聞き返してうざがられたくないとか思っちゃうんだよね」

 人に嫌われたくない。嫌な態度をとられて傷つきたくない。私は向き合うことから逃げて結果楽をしているようでいて、しんどい思いをする方に傾いているのかもしれない。自分のしたことが自分を追いつめている。

 繭子は私の思いを聞きながら逡巡するように首を動かす。

「続けていれば、それが悩みじゃなくなるときがくるよ」

 そう言われ、私はいつかこの悩みを解決する何かがふっと現れたらいいのに、と思う。

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