第3話:歌うAI vs 消えゆく歌手
駅に流れる歌は、完璧だった。
音程も、リズムも、感情表現も。
すべて100点。
だが奈々は、足を止めたまま動けなかった。
「……なんでだろう」
涙が出るわけでもない。
心が動くわけでもない。
ただ、綺麗なだけだった。
かつて彼女は歌っていた。
不安定で、揺れて、時に外れて。
でも——
誰かの心に触れていた。
「人間の歌なんて、もう必要ない」
そう言われた日、彼女は歌うのをやめた。
だがある日、小さなライブバーに立つことになる。
観客は十数人。
マイクは古く、音も荒い。
歌い出した瞬間——
声が震えた。
音も外れた。
(ダメだ……)
そう思った時。
前列の一人が、泣いていた。
「……どうして?」
終演後、その人は言った。
「だって、それ……“生きてる声”だったから」
奈々は初めて理解した。
AIは100点を出す。
だが——
100点の歌が、100点の感動とは限らない。
彼女はもう一度、歌うことにした。
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