嘘が本当になる時

@azusawaren

第1話(重複投稿)

キーンコーンカーンコーン。


最後のテストの時間が終わる。今日で一学期末テストは終わり、俺たちはこれから本格的に受験勉強をしなければならない。


俺は武蔵旭(むさしあさひ)。東京の郊外に住む中学三年生だ。


いつも俺は友達の日南圭(にちなんけい)と

津山翔太(つやましょうた)とつるんでいる。


俺は中一の頃までは地味なやつとしかつるまなくて退屈な毎日を過ごしていたけれど2年生になって

この2人と出会ってからは毎日が最高だ。


だが、この2人と過ごす代わりに毎日少しずつ罪悪感が溜まっていく。


この2人は、口数が少なくて……いわゆる地味で陰キャな奴らをターゲットにして憂さ晴らしをする癖がある。


つまり、この2人とつるんでいるということは俺も一緒に憂さ晴らし……悪口を言ったり本人の前でわざと笑ったりなど……。


そんなしょうもないことをして毎日を過ごしている。


「テストやっと終わったな〜」圭が俺の肩に腕を回しながら言う。圭は中学三年生にして身長が180センチもあり、俺より15センチ近く背が高いので圧倒的な威圧感を兼ね備えている。


「今回俺全部10点以下かもしんねー」馬鹿みたいに大笑いしながら言う。「お前どこの高校行くんだよ?」翔太が呆れながら言う。


「いいよ、俺私立単願で行くし!」「お前の成績で行けるとこなんて……」俺がそう言いかけた時、廊下の曲がり角からある人影が見えた。


この静かで控えめな足音。もしかして……。「あ!」翔太が大袈裟に声を出す。


重い前髪に、黒縁メガネをかけた顔が曲がり角から姿を表す。肩に着く程度の髪を1つに縛っただけの地味な容姿。


稲城レイン(いなぎれいん)だ。こいつは俺と同じクラスにいるけれど口数が少なく、且つ1人行動が多いのでクラスでは浮いている。


稲城は一切こちらを見ないで俺たちの横を通り過ぎようとして行く。


「ご登場だ!」圭が両手を合わせて神を拝めるようなポーズをとる。「今日も陰なオーラをいただきます!」俺は思わず吹き出してしまった。「ぶはっ!!」


途端に稲城と目……レンズ越しなので目があったかは分からないが、こちらを見ているような気がした。


稲城が通り過ぎて姿が見えなくなると圭と翔太は大声で笑い合う。「いや〜やっぱ稲城さん最高だよ。」「意識しないフリして逆に面白いんだよな。実際今にも泣きたいだろうに!」


圭と翔太が口々に言う。

俺も「やっぱ変なオーラ出てるよな」と賛同。すると翔太が突然ポンと手を叩いた。


「決めた!俺ら3人の中でそれぞれが得意教科をいって言って、その中で1番得意教科の点数が低かったやつが罰ゲームを受けるっていうのをやらないか?」翔太は興奮気味に言う。


俺は「は?罰ゲームって、どんな内容だよ?」と怪訝な顔をしながら聞いた。


圭は「罰ゲームによっては俺は参加しねーよ。」と不機嫌になりかけている。


翔太は急に挑発的な笑みを浮かべる。「なんだてめーら、ひよってんのか?」


翔太は息を整えて言った。「罰ゲームの内容は結構面白いぞ?点数がいちばん低かったやつは、稲城さんと仲良くなって8月にある夏祭りの日に嘘告白をして泣かすんだよ。」


俺は心臓がドキンとした。あまりにも難易度が高すぎる。


「本気かよ??」俺は訴えかけるように言う。

だが、


圭は「うわ!面白そうだな!乗った乗った!」と拍手をしながら言う。


翔太は圭を小馬鹿にしたように見ながら「お前馬鹿だからやるかもしれないぞ?」と言うが圭は


「いやいや、俺以外と奇跡起きる人だから。案外お前がなったり……」と余裕そう。


翔太も「ふん。俺はこう見えて学年上位を保ってるんだ。」と自信満々。


俺は何も言わずに黙り込んでしまった。


「っじゃあ!このゲームは決まりで!」俺が反発するまでもなく圭によってゲームは実施されることになった。


帰り道、2人と別れたあと俺はドキドキしながら通学路を歩いた。「俺……。大丈夫かな……」そんな弱音を1人吐きながら土手を歩いた。


夏に入ったばかりの午後の日差しが眩しい。セミの鳴き声を聴きながら俺の心の中はずっと不穏だった。


もしゲームに負けて稲城と仲良くなることになったら……。


想像もつかないし吐き気がする。メガネのせいもあるのか稲城はあまり可愛くないし声も小さいし女子としてのかわいい要素は一切ない。


あの二人にターゲットにされるのも分からなくもない。


こんな暑いのにタイツまで履いているんだ。ベストだって着込んでいるし、相当根暗なやつに違いない。


そんなことを考えているといつの間にか家にたどり着いた。玄関の扉を開けるとお母さんの靴があった。めずらしく今日は早い。


家に入り俺がただいまを言うなりお母さんは「もうテニス部はないのよね?」と聞いてくる。「ああ、そうだよ。」手を洗いながら少しめんどくさそうに答える。


「これで受験勉強に集中できるわね。」お母さんは圧をかけて言ってくる。「お兄ちゃんみたいに、いい高校へ行くのよ。」


その言葉に引っ掛かりを感じながらも適当に相槌を打って自室へ向かった。


そのまま勉強机に座り、スマホを手に取り、SNSを眺める。30分も、1時間も……。勉強もせずに無駄な時間を過ごしているとふとあるアカウントが流れてきた。


「レイン」と書かれたアカウントで、アイコンには近所の川の夕方の景色を撮った写真が乗っている。フォロワー数は20人程度。おそらく稲城のものだろう。「ははっ……」


これはいいものを見つけたと思い、俺はあの二人に知らせてやろうかと思ったが、罰ゲームの事が頭に浮かび、俺は思わずスマホを閉じてしまった。


時計を見ると15:30。俺はやっと着替えて机に問題集を広げ、勉強を始めた。受験勉強を今日から本格的に行うことにした。


どんな高校に行くのかは自分でも分からないが、とにかくやろう。そうでもしないと兄の湊(みなと)に口うるさく言われるかもしれない。


俺は勉強をし、その日は家から1歩も出ることなく終わった。


テストから数日経ち、全教科が返された。圭も翔太もサッカー部は今後活動がもうないので放課後は一緒に集まることができるようになった。


1人ずつ点数を言っていく。圭からだ。


「理科。82点。」は?圭がこんなに取れているだと?俺は内心焦った。この時点で圭に負けているからだ……。


たしか翔太の得意教科は数学。今回は平均点が60点を切っていたし、そんなに高くないかもしれない。俺は心の中でお願いをしていた。


「やるなぁ。俺は数学で94点。」


その言葉を聞いた途端、俺は目を大きく見開き、驚愕。


「お、お前凄い目をしているぞ……。何点だったんだよ?」圭が引き気味に聞いてくる。


俺はしばらく黙っていたが、口を開いた。「国語で、81点。」誤差だった。


圭と誤差で負けたのだ。

圭は大きく拍手をして笑いながら「おつかれ!!お前明日から頑張れよ!!1ヶ月もねえんだからいけるだろ!!」

と俺の肩をバンバン叩き、翔太は「まさかお前が1番低いとは。ま、せいぜい頑張れ。俺たちは鑑賞させてもらうよ。」と不敵な笑みを浮かべている。


俺は言葉も出ず黙り込んでいた。冷や汗をかきまくっている。


「ど、どうやって仲良く……。」と俺が小さく声を絞り出すと翔太は俺の耳元に口を近づけて「明日総合があるだろ?その時話し合いで2人組を作らされるだろうから稲城さんは基本的に余る。そこでお前は余った稲城さんに声をかけてペアになるんだ!そうしたら距離が縮まるぞ!」と言った。



俺はそれを聞いた瞬間震え上がった。


「クラス全員の前で!?嘘だろ!?」


圭は「大丈夫、大丈夫。ネタだってみんなにはすぐ分かるから!あいつはどう思うかわかんねーけどな。」と他人事なので適当なことを言う。


「くそ、公開処刑かよ。無理だよ俺。」と弱気になる俺に翔太は「この罰ゲーム終わったらアイス奢ってやるからさ、やってみてくれよ。」とショボイご褒美を条件に俺は罰ゲームを受けることになった。


帰り道、俺は青白い顔をしていたかもしれない。外はこんなにも暑いのに俺の心は冷え切り、今にも凍えそうだ。今すぐに逃げ出したい。


そう考えながら、俺は帰り道を歩いた。明日から始まる地獄に備えて今夜は勉強の無理をしないで早めに眠ることにした。


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