12 引き裂かれる愛



 銀次が呆れた様にいう。

「まさか、シークレット・ブラッドの直系でもない、普通の人間が、<封印のスクロール>を使うとはな。

 成れの果てが、できそこないのグールとはな!」

 美紅と銀次の間に立ち塞がるのは━━。

 そう。一体の<グール>だった……


 グールは見た目に反して、素早い動きで、銀次に迫った。

「ふん、低俗なグールなぞ……何っ⁈」

 脅威の跳躍を果たし、鋭い爪が、銀次に迫る!

「この、グール風情が……」

 後ろの電柱に飛び、

「シルバー・ステイク・ブラッディ・ローズ!」

 薔薇杭を走らせる。

「グ、グググ……!」

 吹き飛ばされる、グール。


「ねーちゃん!」

「牙⁈」

 牙が、震える美紅に駆け寄る。

 グールと銀次が少し離れたところで戦っている。

「……どういうことなの? 若木くんがいなくなったと思ったらあのグールが……」

「……」

 牙の顔が苦痛で歪む。

「しかも、あのグール、普通のグールより、強くない?」

「あれは……」 

 グールとは、吸血鬼に噛まれたしもべの失敗作。

 死肉を喰らい、理性すらない、眷族にすらすらなれない。

 

「あれは、わ……」

「若木くんは? それにあの巻物。もしかして……」

「ねーちゃん、何か知って?」

「聞いたことがある。吸血鬼に伝わる、伝説のスクロール。

 伝説の吸血鬼、シークレット・ブラッドの選ばれれし家系が開けば、最強の黄金に、それ以外が開けば、

 闇に……」


「ち、グールのくせに意外と強いな」

 銀次の息が上がってきた。

 その目が、美紅と牙を映す。

「それならば!」

 牙と美紅の前に、銀次が降り立つ。

 

 迫ってくる銀次。

 牙が吠える。

「よ、寄るな!」

 気づいたのか、グールが舞い戻ってくる。

「じゃかーしぃ! シルバー・ステイク・ブラッディ・ローズ!」 

 グールが薔薇と共に弾け飛ばされる。

 牙が顔を上げる。

 目が赤くなってる。

「ハーハーハー! まーた、出番だぜー‼︎」

「弟、だめ! あんたじゃまた……」

「ハーハーハー! このガキが!」

 銀次が余裕の笑みを浮かべる。

「うるさい。スクロールのないお前など、我の足元にも及ばぬは!

 回収する手間も省けた。

 最も、お前らを倒せば、関係なかったがな!

 ━━喰らえぇぇ‼︎ シルバー・ステイク・ブラッディ・ローズ!」

「ぐわあああ‼︎」

 牙がぶっ倒れる。


 美紅に近づく銀次。

 やけに、ゆっくりに感じる。

「や、こないで……」

「死ね!

 シルバー・ステイク・ブラッディ・ローズ!」

 ━━その時、美紅は誰かに抱きしめられた。

 背中に次々刺さる銀の杭!

「え……」

 血が、美紅をよごす。

 グールの血だった。


 グールは、美紅を守ると、また、銀次に立ち向かう。

 何度も何度も、杭を受けても、不死身の様にしぶとく。

「な、なんなんだ、こいつ? 本当にただのグールなのか?

 いくら弱体化しているとはいえ、我の薔薇にこんなに耐えるとは……」

 美紅、牙、グール。三者を見、

「きゃあ?」

 銀次は美紅に迫った!

 美紅の首筋に赤い薔薇が飛ぶ。

「きゃああぁぁ!!!」

 うずくまった美紅のそばに銀次が立つ。

 グールが動きを止める。

「やはりな、あのグール、グールのくせに、なぜかこいつに執着している」


 高い音がキッチンに響く。

 美桜の手から、皿が落ちて、派手に割れた。

「あら? 縁起でもないわね……」


 銀次は美紅を抱えた。見かけによらず、力がある。

 はずみに、美紅の胸ポケットからメガネが落ちた。

「この娘の命が惜しいか? 意思なきはずのグールよ」

「グググ……」

 グールが言葉なき声を出す。

「ならば、この娘を返してほしくば、

 聖地・サンクトゥスへ来い!

 まぁもっとも、我のところまで辿りつけるかな?」

 

 いつに間にか、夕方になっていた。

 夕日に、銀次は消えた。

 美紅の悲鳴と共に。






 







 





 







 



 

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