第二話:崩壊する絆と、不吉な予感
二人目の四天王・ミラが支配する「霧の迷宮」。
視界を遮る深い霧と、精神を蝕む幻術が一行を襲う。
「ちょっと、アルベルト! どっちに行けばいいのよ!」
「うるさい! 俺が間違えるはずがないだろう!」
連戦の疲れと、アルベルトの強引な進軍により、パーティーの空気は最悪だった。
リナの魔力は底をつきかけ、セシルの治癒魔法も精度が落ちている。
俺は『荷物持ち』スキルの副次効果で、荷物のバランスから周囲の地形を把握する能力に長けていた。
「アルベルトさん、左です。右はミラの罠の反応があります」
「黙れと言っただろうが! 社畜が俺に指図するな!」
アルベルトは俺の助言を無視し、右の通路へと踏み込んだ。
その瞬間、地面が怪しく光り、大量の毒矢が飛来する。
「きゃああ!」
「くっ……!」
リナとセシルが悲鳴を上げる。アルベルトは反射的に、隣にいたリナを自分の前に引き寄せ、盾にした。
「……え?」
リナが呆然とした声を漏らす。幸い、俺が咄嗟にリュックの蓋を盾にして防いだが、リナの瞳からは勇者への信頼が目に見えて剥がれ落ちていった。
「アルベルト……今、私を盾にしたわね?」
「な、何を言う! 咄嗟の反応だ! それよりサトウ、お前がもっと早く警告しないからこうなったんだろうが!」
責任転嫁。これぞ無能上司の鑑だ。
俺は冷めた目で彼を見ていた。かつて尊敬した「勇者」の姿は、もうどこにもない。ただの、プライドだけが高いクズ男だ。
「おいサトウ、何を見てやがる。さっさと前を歩け。トラップを体で受け止めるのが、荷物持ちの仕事だろうが」
彼は俺の背中を蹴り飛ばした。
セシルも、今のアルベルトの醜態を見て顔を引きつらせているが、長年の執着からか、まだ彼から離れられずにいる。
「……分かりました。俺が先導します」
俺は重い足取りで霧の中を進む。
その先には、広大なホールがあった。そして中央の台座には、神々しく輝く一本の剣が。
『伝説の聖剣・エクスカリバー(仮)』
現勇者のアルベルトが持っているのは「真打ち」ではない、予備の聖剣だ。もしあれを抜けば、本当の救世主になれると言い伝えられている。
「ははは! 見ろ、聖剣だ! これさえあれば、俺は本物の神になる!」
アルベルトが欲望に目を血走らせ、台座へと駆け寄った。
━━だが、その時━━
「……あら、招かれざる客ね」
霧の中から、妖艶な美女――四天王ミラが姿を現した。
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