第47話

令和の爺ちゃん剣士、幕末で無双してました〜竹刀一本で新選組を圧倒〜

第47話 もう一人の来訪者

夜。

会合所の奥の一室。

炎の騒ぎは、まだ外で続いている。

だが、この部屋だけは――

妙に静かだった。

机の上。

そこに置かれているのは。

仮面の欠片。

第45話で割れた、あの破片だった。

源蔵は、それをじっと見ていた。

黙って。

動かず。

その周囲には――

近藤勇、

土方歳三、

沖田総司、

そして綾。

全員が集まっていた。

空気は重い。

沈黙が続く。

やがて。

一人の要人が、ゆっくりと口を開いた。

「……天城」

低く呟く。

その名が出ると、空気がさらに張り詰めた。

綾が恐る恐る聞く。

「その……天城って人」

言葉を選ぶように。

「どんな人なんですか?」

要人が息を吐く。

そして、話し始めた。

「幕府の剣術指南役」

低い声。

「居合の達人だった」

その言葉。

沖田が少しだけ反応する。

「居合……」

興味を持ったようだった。

要人が続ける。

「抜いた瞬間には、すでに勝負が終わっている」

静かな声。

「それほどの男だった」

綾の背筋が冷える。

想像しただけで恐ろしい。

そのとき。

土方が腕を組んだ。

「だが……妙な奴でもあった」

低く言う。

綾が振り向く。

「妙って?」

土方が続ける。

「言葉だ」

短く。

「たまに、意味の分からねぇ言葉を使った」

沖田が少し笑う。

「例えば?」

土方が眉をひそめる。

「……“トレーニング”だとか」

綾が固まる。

一瞬。

理解が遅れた。

そして。

目を見開いた。

「……え?」

そのとき。

源蔵の手が、わずかに動いた。

仮面の欠片を持ち上げる。

裏側を見る。

静かに。

その内側。

そこに。

小さな文字が刻まれていた。

綾が顔を寄せる。

じっと見る。

そして――

息を止めた。

「……これ」

声が震える。

「英語……」

全員が沈黙する。

綾がゆっくり読む。

震える声で。

「Made……in……Japan……」

その言葉。

この時代には――

存在しない言葉だった。

空気が凍る。

沖田の笑みが消えた。

完全に。

土方も、何も言わない。

近藤がゆっくり呟く。

「……まさか」

誰も口にしない。

だが。

全員が、同じことを考えていた。

源蔵が、静かに言った。

「……同じか」

短い言葉。

だが。

重い。

綾が震える声で言う。

「同じって……」

源蔵が答える。

ゆっくりと。

「現代から来た」

その一言。

部屋の空気が、完全に変わった。

沖田が目を細める。

「……なるほど」

静かな声。

理解したようだった。

土方が低く言う。

「つまり……」

言葉を選ぶ。

「お前と同じってことか」

源蔵が頷く。

小さく。

そのとき。

――ふと。

源蔵の脳裏に、光が走った。

記憶。

現代。

道場。

木の床。

静かな空気。

そして――

一人の男。

白い道着。

真剣な目。

居合の構え。

鋭い抜刀。

――シュン。

一瞬で、空気が裂ける。

観客席のざわめき。

誰かが言った。

「天城……!」

源蔵の目が、わずかに揺れた。

小さく呟く。

「……見たことがある」

低い声。

綾が振り向く。

「え?」

源蔵が言う。

「大会だ」

短く。

「居合の演武」

静かな声。

「……あの男を」

沈黙。

沖田がゆっくり言う。

「有名人……だったわけですね」

低い声。

源蔵が頷く。

「強かった」

それだけ言った。

だが、その一言の重さ。

誰も軽く聞けなかった。

土方が息を吐く。

「なるほどな……」

低く言う。

「現代の剣士が……二人」

重い現実。

綾が小さく呟く。

「……同じ時代の人」

震えた声だった。

源蔵が、仮面の欠片を見る。

静かに。

そして。

小さく言った。

「……次は」

短く。

だが、確実な言葉。

「決着だ」

炎の光が、部屋に揺れる。

京はまだ燃えている。

そして――

同じ時代から来た二人の剣士が。

この時代で。

再び、刃を交えようとしていた。

(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る