第33話
令和の爺ちゃん剣士、幕末で無双してました〜竹刀一本で新選組を圧倒〜
第33話 守る剣、斬る剣
煙が、まだ残っていた。
視界は白い。
何も見えない。
だが――
音だけが響く。
――ギィン!!
刃がぶつかる。
火花が煙を裂いた。
源蔵が一歩下がる。
すぐに踏み直す。
――ギン!!
さらに衝突。
速い。
止まらない。
その中で。
岡田以蔵の目が鋭く光っていた。
「……いいな」
低く呟く。
「ここまで来るか」
次の瞬間。
消えた。
最速。
これまでよりも、さらに速い。
――ギィィン!!
重い一撃。
源蔵が受ける。
腕に衝撃が走る。
「くっ……!」
だが、崩れない。
踏み止まる。
以蔵の動きが変わっていた。
迷いがない。
ためらいもない。
斬るためだけの動き。
完全な実戦剣。
「血を流さねば……」
以蔵が言う。
踏み込む。
「変わらぬ!!」
――ギン!!
振り下ろす。
重い。
鋭い。
だが。
源蔵は半歩だけ動く。
最小。
無駄なし。
刃が空を切る。
――スッ。
触れない。
「……!」
以蔵が目を細める。
さらに踏み込む。
連撃。
――ギィン!
――ギン!
――ギィィン!!
連続。
だが――
届かない。
源蔵の無拍子。
さらに洗練されていた。
守り。
完全に近い。
「守らねば……」
源蔵が言う。
静かな声。
「未来は残らん」
短い言葉。
だが重い。
刃が再び迫る。
――ギン!!
外す。
――ギン!!
外す。
以蔵の攻撃。
すべて。
届かない。
空気が張り詰める。
そして。
一瞬。
以蔵の目が揺れた。
ほんのわずか。
その瞬間。
頭の奥に、何かがよぎった。
――昔。
雨。
泥。
倒れている男。
斬られている。
叫び声。
「助けてくれ……!」
だが。
誰も動かなかった。
刀を持つ者たち。
見ているだけだった。
そのとき。
若い以蔵が思った。
(守るだけでは……)
(何も変わらぬ)
煙が揺れる。
現実へ戻る。
以蔵が言う。
「守るだけでは……」
低く。
強く。
「何も変わらぬ!!」
踏み込む。
全力。
――ギィィン!!
衝突。
だが。
その瞬間。
源蔵が動いた。
初めて。
守りではなく。
攻めた。
一歩。
最小。
だが速い。
――バシン!!
竹刀が走る。
以蔵の肩に当たる。
鈍い音。
初めて。
以蔵が、一歩下がった。
空気が止まる。
以蔵の目が細くなる。
「……」
驚き。
そして。
笑い。
「いい……!」
口元が上がる。
明らかに。
楽しんでいた。
「実にいい!」
源蔵が言う。
「終わらせるぞ」
短い言葉。
だが。
重い。
そのとき――
別の場所。
――ガン!!
激しい音。
土方歳三が幹部と激突していた。
息が荒い。
だが、まだ立っている。
「まだだ……!」
さらに別の場所。
――ギィィン!!
沖田総司が高速戦を続けていた。
袖が裂けている。
血が滲む。
それでも笑う。
「面白いですねぇ……!」
中央では。
「押し返せ!!」
近藤勇の声が響く。
まだ戦いは続いている。
すべては――
ここに繋がっていた。
源蔵と以蔵。
二人が、向かい合う。
距離を取る。
静止。
完全な沈黙。
空気が止まる。
源蔵が竹刀を構える。
少しだけ。
いつもと違う構え。
深く。
低く。
以蔵も刀を上げる。
目が光る。
「来い」
低い声。
次の瞬間。
同時に踏み込む。
最速。
最大。
互いのすべて。
――ギィィィィン!!
巨大な音。
火花。
空気が裂ける。
刃と竹刀が交差する。
その瞬間――
静止。
煙が舞う。
結果は、まだ見えない。
ただ。
次の一瞬が。
すべてを決める。
(続く)
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