第16話

令和の爺ちゃん剣士、幕末で無双してました〜竹刀一本で新選組を圧倒〜

第16話 龍馬の依頼、相手は新選組二番隊

「今日は平和だねー」

道場の縁側で、綾が伸びをする。

「事件もないし、新選組も来ないし……最高じゃん」

「そうだな」

源蔵はいつも通り素振り中。

ヒュッ、ヒュッ。

そのとき。

「ほう、ええこと言うのう」

声。

「フラグ立てるのやめて!?」

綾が即ツッコミ。

振り向けば、柱にもたれる男。

坂本龍馬。

「頼みがある」

珍しくストレートだった。

綾が嫌な顔をする。

「絶対ヤバいやつだ……」

龍馬は笑わない。

「人を守ってほしい」

「護衛?」

「そうじゃ」

一拍。

「相手は新選組じゃ」

空気が凍る。

綾の顔が引きつる。

「……誰?」

龍馬がさらりと言った。

「来るのは――」

斎藤一。

そして。

永倉新八。

「終わったああああ!!」

綾が頭を抱える。

「無理! 絶対無理!!」

源蔵は一言。

「問題ない」

「あるよ!?」

龍馬が肩をすくめる。

「まあまあ。面白いじゃろ?」

「命かかってるのに!?」

場面が変わる。

京の町。

護衛対象――とある男が、足早に歩く。

綾と源蔵が横につく。

「ほんとに来るの……?」

「来る」

即答。

その瞬間。

気配。

(……上!)

綾が顔を上げた。

屋根。

影。

次の瞬間――

――シュッ。

何かが落ちる。

いや、来る。

「っ!?」

反応する前に――

コツ。

音。

源蔵が、そこにいた。

――バシン!

乾いた音。

影が弾かれる。

着地。

静か。

無駄がない。

斎藤一。

無言。

ただ構える。

「……来た……」

綾が息を呑む。

次の瞬間。

別方向から突進。

「おらぁ!!」

声と共に、一直線。

重い一撃。

――ガンッ!!

綾が必死に受ける。

「うぐっ!?」

腕が痺れる。

押される。

「な、何このパワー!?」

目の前に立つのは――

永倉新八。

豪快に笑う。

「やるじゃねぇか!」

「やりたくないんだけど!?」

戦場が分かれる。

源蔵 vs 斎藤。

綾 vs 永倉。

斎藤が動く。

無音。

消えたように見える。

だが――

その“前”。

源蔵の竹刀が、そこにある。

――バシン。

一歩も踏み込ませない。

斎藤の目がわずかに細まる。

(……読んでいるのか)

違う。

(……そこにいる)

一方。

「はあっ!!」

綾が必死に打ち込む。

――ガンッ!

弾かれる。

重い。

速い。

「くっ……!」

押される。

だが、踏みとどまる。

(負けない……!)

もう一歩。

踏み込む。

――バシン!

一撃、入る。

「お?」

永倉が笑う。

「いいじゃねぇか!」

さらに速くなる。

(やばい!)

そのとき。

一瞬。

永倉の視線がズレる。

背後。

源蔵の気配。

「今だ!」

綾が打ち込む。

――バシン!

決まる。

永倉が一歩下がる。

「ははっ!」

楽しそうに笑う。

「面白ぇな!」

戦場が止まる。

斎藤が口を開いた。

「……なるほど」

短い一言。

刀を収める。

永倉も肩を回す。

「今日はここまでか」

「え、終わり!?」

綾が叫ぶ。

斎藤が源蔵を見る。

「……次は斬る」

それだけ言って、背を向ける。

二人は去る。

静寂。

綾がその場に崩れる。

「護衛ってレベルじゃない……」

息が荒い。

源蔵は竹刀を肩に担ぐ。

「そうか?」

「そうだよ!!」

後ろで、龍馬が笑う。

「ええ感じじゃのう」

「どこが!?」

龍馬は空を見上げる。

「これで、次に進める」

その一言が、妙に重い。

風が吹く。

京の空気が、また動き出す。

ただの戦いじゃない。

もっと大きな何かが、動いている。

だが――

当の本人は。

「面倒だな」

「だから軽いって!!」

今日も、変わらない。

(続く)

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