一話完結とは思えないほどの圧倒的な読み応えと、一気に読ませる筆力の高さに脱帽しました。一話が非常に濃密に構築されており、まるで一編の長編映画を鑑賞したかのような、贅沢で深い余韻に浸ることができます。
独自の神話を背景としたハイファンタジーの世界観は、細部まで作り込まれていて実に魅力的。その舞台で描かれる、月国の王女セレネと太陽国の王太子アレクシスの関係性がたまりません。
「愛のない契約結婚」という冷徹な始まりから、静かに、しかし確実に育まれていく二人の絆。特にアレクシスの、感情をあえて表に出さないミステリアスな佇まいが、物語に高潔な緊張感を与えています。儀礼を重んじる彼のストイックな行動の端々に、言葉を超えたセレネへの深い献身が透けて見え、その「語らずとも伝わる愛」の深さに胸が熱くなりました。
理屈を超えて、魂の深いところで結ばれた二人の幸福な姿。
美しく完成された世界観の中で、静かに燃えるような愛の形を見守りたい——。そんなロマンあふれる体験を求める方に、心からお薦めしたい傑作です。