深い山奥に天神家の古い日本家屋はあった。そこに住むのは和装の女性・天神弥生とその弟で高校生の聖治。ある日、弥生が声をかけても、聖治は無反応だった。耳がつまっているんじゃないの? 弥生は聖治の耳かきをしてやることに……。
耳かきをここまで細やかに描写されたことに感心しました。引用させていただくと、「竹が薄皮を擦過する微細な振動」など実際に耳かきをされているようなリアルさを感じます。
弥生と聖治の姉弟の距離感が切ないです。仲のよい姉弟の距離感。でも、それはいずれ失われてしまうことになる。姉弟というのはいつまでも癒着してはいられないからだ。その貴重な瞬間をかみしめる姉・弥生の心情が伝わってくるかのようです。
「今はそばにいたい」。そんな切なさを堪能しました。