第39話
明日は孤児院の引っ越しだ。
あんな傭兵をいつまでも庭に転がしておくわけにはいかない。さっさと冒険者ギルドに引きとってもらわないと、何か起きてからじゃ遅いからな。
「スケルトンさん、ギルドへ報告に行ってきます。あの傭兵、置いたままじゃマズいですから」
「分かりました。こちらは私が見張っておきます。リョージさんは気をつけて行ってらっしゃい」
確かに、あの傭兵は黙らせたけど他の傭兵が居ないとは限らないからなぁ
心強い言葉に送られ、俺は街へと向かった。
街中はいつも以上に騒がしく、何かが起きたような不穏な空気が漂っている。俺はそのままギルドへ直行し、ヴォルフさんへの取次を願い出た。案内された執務室に入るなり、向けられたのは氷のような視線だった。
「……何をした?」
酷い、第一声がそれか、ジロリと睨み付けてくるヴォルフさん、いつもなんかしてる様な言い方はやめて欲しいが、今回は傭兵の事を伝えに来たから変わらないか。
「例の傭兵がまた来て、スケルトンさんに返り討ちにされました。今は屋敷にいます」
「な……。分かった、そっちはこちらで対処する。だが話は別だ。他には何かしていないか?」
他と言われても、心当たりなど何一つない。
「えっと、何かあったんですか? こっちは傭兵が来た以外、至っていつも通りでしたが」
「お前がやった傭兵が所属していた傭兵団が……壊滅した」
「……はい?」
「今は街の衛兵が総出で捜索中だ。お前と、あのアンデッドは容疑者として疑われている」
なんだと?ふざけてるのか?てか。
「ヴォルフさんは、疑ってるんだろ?俺たちの事」
又だ、イライラしてきた。
「当たり前だ! 短期間で傭兵団を潰せる奴など、あのアンデッドくらいだろうが。そのきっかけを作ったのはお前じゃないのか?」
「ふざけんなよ、大体管理を押し付けて、その後は管理費を渡すだけ、情報収集は後手に回り、対策出来ない上に今度は容疑をかけられる?舐めてる?ならいいよ容疑でもなんでもかければ良い、管理費も要らないし、冒険者も辞める、後はスケルトンさんの事は好きにしたらいい」
あまりにも腹が立つ、せっかくスケルトンさんになだめられて、信用はしないが利用してやるくらいに落ち着いたのに、ダメだごめんスケルトンさん、ムカつくわヴォルフもギルドも。
「おい! 待て! このままだとお前を取り押さえるハメになるぞ!」
「やれよ。」
やだ、俺ってこんなに好戦的だったけ?まぁいいや、捕まるにしても盛大に暴れてやろう
あーあ、これで孤児院の話も無くなるかな、仕方なしやな
「クソがどうなっても知らんぞ!こいつを捕らえろ!」
入り口から四人の冒険者がなだれ込んできた。最初から捕らえる気だったわけだ。
恐怖も殺意も感じない。俺は『ウォーターボール』を放ち、油断していた彼らの顔を水球の牢獄で捕らえた。
「おい、すぐに止めろ!これ以上はより罪が重くなるぞ!」
「何だそれ、俺の事を馬鹿にしすぎだろ、最初から決めつけてたんじゃ無いか、それとも、アンタも貴族側ってヤツか?まぁもうどっちでもいいや俺は帰るわ」
ヴォルフを睨みつけて言い放つと黙ってしまった、動く気配も無いから立ち去る事にしたギルドから出ると魔法を解除して、スケルトンさんの所に帰る。
何となくだけど何人か着いて来てる気がするがもう知らん、この世界に来て上手くやれ始めたと思ったんだけどな、この街離れるか?でもな、今の実力じゃすぐに捕らわれてしまうだろうし、スケルトンさんにもうちょい鍛えて貰ってからにするか
屋敷を目前にしたところで、あの傭兵が歩いてくるのが見えた。
うわぁ、最悪だあいつ何息ふきかえしてるんだよ、何時でも戦える様に身構えるが、今朝方の様なトゲトゲしさは無くむしろ落ち着いた感じが漂ってくるし、殺気見たいのも見えない、逆に後ろから近づいて来る冒険者の方が殺気纏ってんじゃ無いの?ってくらいに気配を感じる。
男は何事もなかったように俺の横を通り過ぎ、俺を追ってきた冒険者たちの前で足を止めた。
「……傭兵団を潰したのは俺だ。探していたんだろう?」
一瞬、時間が止まった。
呆然とする冒険者たちを置き去りに、男はそのまま走り去っていった。
俺はすぐにどうでもいいやと思い直して屋敷に戻った。
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