これは、転生前の悲劇と、転生後の葛藤、そして希望を捨てない真っ直ぐな想いを描いた物語——
転生で記憶を失いながらも、ひたむきで、優しい心を失わないヒロイン。
その愛を大切にしたい二人の男性。この男性が、愛の深すぎる精霊王と、不器用すぎるくらい愚直な王様で、彼等のこの性質がヒロインの愛に予想外の障害となって立ちはだかるのです!
無条件に心の支えとする「信仰」と、個を尊重して心を寄り添わせる「信頼」。
この似て非なるものに気付き、彼等はハッピーエンドを迎えるのですが……
二度の生を通して描かれる、不朽の愛の姿が、見事に、この中編に詰まっています!
真摯な愛の葛藤を、是非ご一読ください。
雨が降らなくなったフローランド王国。その生命線であるセイル川は細く水流が残るのみ。
『精霊の愛し子』であるオフィーリアは、毎日雨を願い川のほとりで祈りを捧げていました。
それでも雨が増えないことで彼女を疑う者もいる中、彼女を守るべき王太子のフロリアンまでもが彼女をかばいきることができず、オフィーリアは突然の鉄砲水に流され命を落とします。
そのセイル川は精霊王の国へと続いており、彼女は精霊王オベロンのもとへ。
大切な人を守りきることができなかったフロリアンは、時を経てイアン国王へと転生します。そして再び出逢った二人は……。
オフィーリアの献身的な愛と、フロリアンの悔恨。
生まれ変わった彼等は、同じ過ちを繰り返さずにすむのでしょうか。
泉の鏡に映る過去の切なさと、枯れないスミレの花の希望。そして、再び訪れる試練。
恋人達の純愛の隙間に、人の愚かさと賢さがそっと描かれています。
イアンが精霊王による試練で気付いたものは、きっと忘れてはいけない感謝の心と前を向くための強さではないでしょうか。
愛と思いやりを教えてくれる美しい物語でした。
西洋文学の空気漂うファンタジーがお好きな方に、ぜひおすすめです。
精霊王オベロンの加護を受けるフロランド王国。そこには精霊の愛し子と呼ばれるオフィーリアがいた。
オフィーリアは王太子フロリアンに想いを寄せていたが、雨が10ヶ月も降らないことで、本当に精霊の愛し子なのか、と国中から疑心の目で見られていた。
彼女が祈っていたセイル川は、確実に太さを増していたというのに――。
ある日事件は起こり、オフィーリアは濁流にのまれてしまう。
しかしたどり着いた先は、精霊王オベロンの国。彼女は正しく「精霊王の愛し子」だったのだ。
物語は2部構成になっています。
オフィーリアとフロリアン
フィオーリナとイアン
オフィーリアとフロリアンは転生して再び巡り合います。
ここからが本当に面白かったです!
不穏な影はつきまとうものの、イアンは真面目な青年です。オフィーリアと巡り合い、精霊の愛し子と判断されたフィオーリナにも実直に誠実に相対します。
私はイアンとフィオーリナが幸せになるよう祈りながら読みました!
また、精霊王オベロンさまもとても魅力的な方でした。
とても上質なファンタジー、そして筆致は繊細でとても優しく美しい。
これぞまさに「宿命の伴侶」と納得する物語でした。
上質なファンタジーに触れたい方、是非に強くオススメします!ぜひ…!!
悠久の時を越えて、再び……。
それこそまさに「宿命」や「運命」という言葉を強く感じさせられます。
主人公のオフィーリアは「精霊王の愛し子」とされ、その土地に「水の恵み」をもたらすものと期待されていた。
オフィーリアは王太子であるフロリアンに想いを寄せていたが、必死に祈っても雨を降らせられないために息苦しさを感じていた。
そんな中で、オフィーリアは突如濁流に呑まれ、この世から消えることになる。
その先で目にしたものは……。
オフィーリアと言えば、シェイクスピアの『ハムレット』に登場する悲劇のヒロインの名前。最後は水死したことで知られ、ミレーの絵画でも描かれていることで有名です。
そして、精霊王の名前はオベロン。こちらもシェイクスピアの『真夏の夜の夢』に登場する妖精の王と同名。
そんなシェイクスピア文学の香りが漂うのも、本作の味わいの一つ。
でも、大事なのはここから先。
ハムレットの内容と同じく水に呑まれたオフィーリアは、そこで命を落として終わりにはなりません。
彼女は濁流の先で「別の世界」を垣間見ることに。そこは現世とは時間の流れの異なる場所で、いわばリップ・ヴァン・ウィンクルのような現象が起こるところにもなっています。
そんな世界に身を置く中で、「外の世界」では思わぬ変化が……。
それを見たことで、オフィーリアは「ある決断」をすることになり、物語は予想外の『第二部』へと繋がっていくのです。
ここがもう、とにかく胸を揺さぶられました。
悠久な時間の流れの果てに、一つの想いを結実させていく。手塚治虫の『火の鳥』だったり、萩尾望都の『ポーの一族』だったりを思い出させられ、彼女の行く末がどのようなものになっていくのかと、続きが気になって仕方なくなります。
悠久で、幻想的で、そして切実さに満ちた、とても素敵な物語でした。
最終話までのレビューです。
舞台は精霊王オベロンの祝福に守られたフローランド王国。そこに生きる王太子フロリアンと精霊の愛し子と称される少女オフィーリアにまつわる転生と愛のファンタジーです。
精霊王の加護を受けている王国フローランド。しかし、ここ十ヶ月にわたり雨は降らず、生命線となるセイル川は枯れゆき、王国は水渇問題に悩んでいました。
国民の不安は高まりつつあるのに、加護の力に頼りすぎた王国はこの境地を自らの政策で打開しようとしません。精霊たちがなんとかしてくれる、今回だって――人間心理の本質が窺える描写は読み応えがあり味わい深いというものです。
精霊王の加護――命の雨をもたらすその恵みには、精霊王オベロンのオフィーリアに対する切なる願いが込められていました。
しかし、王族たちはこの願いに気づけずに……
セイル川の川底からオフィーリアが幾度として雨の訪れを願っても、天は味方をしません。
届かない祈り。
得られ難い雨量。
もどかしい時間が過ぎるとともに、彼女に対する苛立ちや不満、疑念が心底に抱かれていくのです。
仕舞いには、オフィーリアは精霊王の愛し子ではないと、責め立てられ、罵られ、忌み嫌われては痛みを抱え込むことに。
理不尽な仕打ち。
可哀想なオフィーリア。
それに追い打ちをかけるかのごとく、ついには悲痛な出来事が起きてしまう。
前世の悲恋に別れを告げて――生まれ変わったら、せめて……枯れない花に瞳の色の想いを込めて。
転生を果たす二人を待ち受けるものは、純然たる愛の芽吹きか、それとも悲しみの連鎖か。
種を跨ぐアンビバレンスな感情が映える作風が魅力。人間と精霊の思惑が交錯する、愛憎相半ばする情感豊かな素敵なファンタジーです。