第5章

神とシステムの真実


 王都。


 夜。


 宿屋の部屋。


 窓から月の光が差し込んでいる。


 主人公は椅子に座っていた。


 腕を組んで。


「つまり」


 一拍。


「俺」


「はい」


「世界のバグ?」


 宮廷魔術師の老人は首を振った。


「正確には違う」


 リディアが聞く。


「どう違うんです?」


 老人は静かに杖を置いた。


「まず」


「はい」


「この世界のレベルシステム」


「はい」


「それは神が作った」


 主人公が言う。


「それは聞きました」


 老人は続ける。


「だが」


 一拍。


「神は」


「?」


「それを永遠に管理できない」


 主人公が首を傾げる。


「神なのに?」


 老人が言う。


「神にも限界はある」


 沈黙。


 老人は窓の外を見る。


「この世界は」


「?」


「数千年前」


「?」


「一度滅びかけた」


 主人公が言う。


「魔族?」


「そうだ」


 老人は続ける。


「当時」


「?」


「人間は弱かった」


「はい」


「魔族は強かった」


「はい」


「そこで神は」


 一拍。


「レベルシステムを作った」


 主人公が言う。


「人間強化プログラム」


 老人が頷く。


「その通り」


「しかし」


 一拍。


「神は理解していた」


 主人公が言う。


「何を?」


 老人は静かに答えた。


「このシステム」


「?」


「いつか壊れる」


 沈黙。


 リディアが言う。


「どうして?」


 老人が言う。


「理由は簡単だ」


 一拍。


「世界は変わる」


「?」


「魔族も進化する」


「?」


「人間も変わる」


「?」


「その時」


 一拍。


「固定されたシステムは」


「?」


「追いつけなくなる」


 主人公が呟く。


「アップデートが必要」


 老人が笑った。


「その通り」


 そして。


 ゆっくり主人公を見る。


「だから神は」


 一拍。


「保険を作った」


 沈黙。


 主人公が言う。


「保険?」


 老人が答える。


「システム管理者」


 リディアが聞く。


「それって」


 老人は頷く。


「そうだ」


 一拍。


「世界の調整者」


 主人公が言う。


「誰です?」


 老人は答えた。


「決まっている」


 一拍。


「君だ」


 沈黙。


 主人公が固まる。


「……え?」


 リディアも言う。


「待ってください」


「はい」


「この人が?」


 老人は頷く。


「条件がある」


 主人公が聞く。


「条件?」


 老人が言う。


「レベルシステムに依存しない者」


「?」


「経験そのものを力に変える者」


「?」


「死線を越え続ける者」


 主人公が呟く。


「それ俺」


 老人が静かに言う。


「そうだ」


 一拍。


「君は」


「?」


「神が作った後継者候補だ」


 沈黙。


 主人公が言う。


「ちょっと待って」


「はい」


「俺」


「はい」


「ただの無茶する冒険者ですよ?」


 老人が笑った。


「それが重要だ」


 主人公が言う。


「なんで」


 老人が答える。


「普通の人間は」


「?」


「安全を選ぶ」


「?」


「だからシステムに依存する」


「?」


「しかし君は」


 一拍。


「システム無しで戦い始めた」


 主人公が言う。


「結果死にかけました」


「それでも」


 一拍。


「生き残った」


 沈黙。


 リディアが言う。


「つまり」


「?」


「この人は」


 老人が答えた。


「そうだ」


 一拍。


「神が想定した存在」


 主人公が天井を見る。


「スケールでかい」


 老人が続ける。


「だが問題がある」


 主人公が言う。


「またですか」


 老人が頷く。


「君がその力に完全に覚醒すれば」


「?」


「レベルシステムは不要になる」


 沈黙。


 主人公が言う。


「え」


 老人が続ける。


「つまり」


 一拍。


「この世界のルール」


「?」


「書き換えられる」


 部屋が静かになる。


 リディアが呟く。


「それって」


 老人が言う。


「そうだ」


 一拍。


「神と同じ領域だ」


 主人公が言う。


「いやいや」


「はい」


「無理でしょ」


 老人は静かに言った。


「すでに」


 一拍。


「始まっている」


 窓の外。


 空。


 雲が割れる。


 黒い影。


 巨大な翼。


 リディアが目を見開く。


「……嘘」


 主人公が窓を見る。


「また?」


 空に浮かんでいたのは。


 ドラゴンより巨大な影。


 そして。


 その背に立つ魔族。


 魔王軍幹部。


 声が響く。


「人間」


 低い声。


「ついに見つけた」


 主人公が言う。


「誰?」


 魔族が答える。


「魔王軍四天王」


 一拍。


「死神アルゼル」


 空から黒い魔力が降り注ぐ。


 街が震える。


 魔族が笑った。


「世界のバグ」


「いや」


 一拍。


「神の後継者候補」


 主人公を指差す。


「今ここで」


 一拍。


「殺す」


 王都の夜空に。


 戦争の気配が広がる。


 そして。


 この戦いは。


 ただの戦闘ではない。


 それは――


 神の後継者を決める戦いの始まりだった。

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