第11章
英雄試験 ――王都崩落級演習
王都。
巨大な闘技場。
石造りの観客席は満員だった。
貴族。
騎士。
魔術師。
冒険者。
中央には王の席。
その前の巨大な広場。
そこに立っているのは――
主人公。
「……なんでこんなことに」
隣に立つ受付嬢――リディアが腕を組んでいる。
「英雄候補試験です」
「聞いてますけど」
「逃げますか?」
「逃げません」
「なら覚悟してください」
観客席から声が響く。
「本日の試験内容を発表する!」
騎士団長だ。
「王国は新たな英雄候補を選定する!」
ざわめき。
「試験は三段階!」
「第一試験!」
扉が開いた。
重い音。
地面が揺れる。
「……おい」
主人公が言う。
「でかくないですか」
現れたのは――
巨大な魔物。
四メートルの巨体。
黒い毛。
角。
「黒鉄のミノタウロス」
観客が騒ぐ。
「A級魔物だ!」
「新人が相手できるわけない!」
主人公は剣を抜いた。
「俺」
「はい」
「これ倒したことあります」
「知ってます」
「またですか」
「強化版です」
ミノタウロスが咆哮した。
ドゴォン!
地面が割れる。
突進。
「速っ!」
主人公は横に転がる。
石が砕ける。
リディアが観客席から呟く。
「判断は悪くない」
主人公は立つ。
呼吸を整える。
考える。
昔の俺なら。
ここで突っ込んで死ぬ。
でも今は違う。
剣を構える。
「来い」
ミノタウロスが突っ込む。
主人公は動かない。
ギリギリ。
直前。
横へ。
ザン!
脚を斬る。
ミノタウロスが吠える。
振り回す腕。
主人公は下に潜る。
腹を斬る。
血。
観客席がざわつく。
「動きが」
「新人じゃない」
リディアが小さく言う。
「ちゃんと見えている」
主人公は思う。
十回。
二十回。
三十回。
俺は死にかけた。
でも。
その全部が――
今ここにある。
「終わりだ!」
剣が振り下ろされる。
ドン!
ミノタウロスが倒れた。
静寂。
そして――
歓声。
「倒した!」
「新人が!」
騎士団長が言う。
「第一試験合格!」
主人公は息を吐く。
「疲れた」
しかし。
騎士団長は続けた。
「第二試験!」
主人公が固まる。
「まだあるんですか」
扉が開く。
今度は二つ。
出てきたのは――
人。
剣士。
鎧。
紋章。
「……嘘でしょ」
S級冒険者。
観客席がどよめく。
「双剣のゼルド!」
ゼルドが笑う。
「よろしく」
主人公が言う。
「これ」
「はい」
「試験ですよね」
「うん」
「手加減あります?」
「ない」
主人公がため息をつく。
「ですよね」
ゼルドが構える。
速い。
一瞬。
もう目の前。
キン!
剣が弾かれる。
主人公は後ろへ飛ぶ。
腕が震える。
「重っ」
ゼルドが笑う。
「いい反応」
斬撃。
連撃。
主人公は避ける。
受ける。
転がる。
観客席がざわつく。
「耐えている」
「S級相手に」
リディアは黙って見ている。
主人公は思う。
勝てない。
絶対に。
でも。
負けない。
ゼルドが踏み込む。
剣。
主人公は突っ込む。
懐。
体当たり。
ドン!
ゼルドが一歩下がる。
観客が驚く。
主人公は笑った。
「一歩」
ゼルドが笑う。
「いいな」
そして剣を止めた。
「第二試験終了」
主人公が息を切らす。
「……え?」
ゼルドが言う。
「十分」
「?」
「合格」
歓声。
騎士団長が立つ。
「そして」
一拍。
「最終試験」
主人公が空を見る。
「まだあるのか」
地面が震えた。
ドォン。
闘技場の中央が割れる。
巨大な影。
リディアの顔が変わった。
「……嘘」
現れたのは。
ドラゴン。
観客席が凍りつく。
「災害級魔物」
騎士団長が言う。
「最終試験」
一拍。
「生き残れ」
主人公が呟く。
「無理」
ドラゴンが咆哮する。
その瞬間。
闘技場に飛び降りた影があった。
ドン。
砂が舞う。
長い髪。
剣。
立っているのは――
リディア。
「……は?」
主人公が言う。
「受付?」
リディアが剣を抜いた。
静かな声。
「試験内容変更」
騎士団長が笑う。
「元S級参加」
観客席が揺れる。
リディアが言う。
「あなた」
「はい」
「死なないでください」
「はい」
「今回は」
一拍。
「本気で戦います」
ドラゴンが翼を広げた。
炎が溜まる。
主人公は剣を握る。
横には。
伝説のS級。
そして。
王都の空に。
戦いの火が上がった。
――英雄試験。
本当の戦闘が始まる。
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