君の香をたどり〜俺様は君をさがしだす〜
京極道真
第1話 長い眠りから覚める〜セイメイ
カラダが宙に浮く。
ゆっくりと目を開く。
暗闇の中。無数の星と月が飛び交う。
君を失ってからどれくらいの時が
経っただろう。
俺様の元を去った十二単。
君は雪のように白く美しく。
椿にように赤い紅をさし、
目の前を
静々と歩く。
手を差し伸ばした先に帝が。
俺様は、この平安の時の世に
名声をあげたセイメイ。
俺様の陰陽師の前には、誰もが逆らえない。
誰もが俺様をもてはやし、恐怖する。
気づくと俺様に逆らう者は誰もいない。
「セイメイの力は、
もはや帝を越えているぞ。」
「帝もご存知だろう。」
「こわい。こわい。
セイメイには近づくなかれ。」
俺様の陰陽師としての力か・・・
すれ違うものすべて深くお辞儀をする。
まともに人の顔を見ていない。
興味もない。
俺様は式神のキリンとヤッコを従え、
すべてをこなした。
そんなある日、庭に手鞠が落ちていた。
俺様は拾い上げ「可愛いらし手鞠だ。」
ほのかに菊の香りがした。
式神キリンが
「主様、誰のものともわからぬ手鞠。
燃やしましょうぞ。」
キリンが指から炎を出す。
「そうだな。」と手鞠を投げようとした時。
式神ヤッコが「お待ちください。」
可愛らしい姫が。家来と共に。
ふざけて姫様が投げたところ
この屋敷に手鞠が入ったようで。
俺様は千里眼でその姫を見た。
幼いが賢い気の強そうな姫に見えた。
俺様は少し意地悪をしたくなった。
「姫様、返して欲しければ、あの梅の木まで競争をしようじゃないか。」
姫の家来も、式神ヤッコも「大人げない。」とあきれている。
「これも余興だ。ホホホホ。」
「では姫様。始めるぞ。」
俺様はゆるりと走り。
後ろから姫の気配はない。
振り返ると姫は手鞠を手に
勢いよく梅の木に目掛け投げつけた。
「・・・」
俺様は恋に落ちた。
「参りました。姫様。このセイメイに勝つとは。」
手鞠を姫に手渡した。
「ありがとう。」
「名前は?」
「菊姫です。
セイメイ様。私を好きになってはいけません。
この平安の時では
あなたの想いは実りません。」
「ホホホホ。何をおっしゃられてるのかな。
大人をからかうものではないですよ。
菊姫様。」
見透かされた。
そして時が過ぎ。今。目の前を菊姫は帝のもとへ嫁ぐ。
『菊姫。お前は何者なのか。』
お辞儀をした俺様の脳内に菊姫の声が。
『セイメイ様。この平安は帝が造った世界です。
私を愛しているならば、セイメイ様の世界を造ることです。
その時私は再び、あなたの前に現れましょう。』
俺様は地上に再び舞い降りた。
見つけたぞ。「菊姫。」
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